「ますます眠れなくなる宇宙のはなし〜「地球外生命」は存在するのか」佐藤勝彦 著

2017年08月24日


宇宙論の決定版ロングセラー『眠れなくなる宇宙のはなし』、待望の第2弾です。本作のテーマは地球外生命。近年急速な発達をとげている太陽系外惑星の最前線レポートから、「はやぶさ2」のミッション、火星の生命の可能性、生命の存在条件などまで、幅広く解説します。「第二の地球」は近い将来みつかるのか。ご期待ください。

想像以上にわかりやすく、読みやすかったです。
太陽系外に地球型の惑星が見つかった…なんてニュースに、ちょっと盛り上がったりする今日この頃ですが、なぜ肉眼でも見えてないのにわかるのか?などなど。
宇宙人はいるのか?コンタクトが取れる日が来るのか?
たとえば将来、地球型惑星に人間の移住は可能なのか?
なるほどと思いながら、すいすい読めてしまいます。

これほど広大で無数の星があるのだから、知的生命体や人間に近いとまでいかなくても、なんらかの生物がいるに違いない…SFでなくとも、かなり昔からそう考えられてきました。私はこどものころから宇宙人を想像してワクワクしてました。
しかし私たちは、地球以外では生命の痕跡すら見つけていません…今の所。

調査や研究が進むにつれ、生命が育まれるためには、様々な条件があり、太陽系のなりたちからも、地球はたまたまそれらが揃っただけ、文字通り奇跡の星なのかも?そんな風にも思えてきます。
太陽から遠からず、近すぎずで、ちょうどいい温度で、大気をキープできるくらいの大きさで。
地球が生命を進化させる期間に、小惑星や彗星が衝突してしまうと、進化の前に大量絶滅。回避するため太陽系に侵入してくる小惑星や彗星を重力で吸い取ってくれる巨大惑星(木星・土星)が2つ必要、しかし巨大惑星が3つだとバランスが崩れ、地球はいずれはじき飛ばされるか、大きな惑星に飲み込まれてしまうらしい。
ではまるっきり彗星や小天体の衝突がないといいのかというと、アミノ酸などから偶然生命が誕生するには、時間がかかりすぎる。生命のきっかけは、小天体に含まれた生命の材料によって(何らかのインパクト・事故のようなものによって偶発的に)誕生したのかもしれない。
過酷な環境でもだめ、何事もおきないおだやかな環境でもだめ。地軸の傾きや紫外線から守る磁場やオゾン層…ちょうどいい環境(笑)
そんな惑星を、たまたままだ見つけていないだけなのか?
観測技術や研究が進み、今後もたくさんの地球型惑星が見つかっていくのでしょうが、生命を育む星を見つけられるのか?はっきりしたことはわかりません。

さらに、人類が宇宙に出るには、地球と同じように空気など環境を維持し、宇宙放射線などから守ることのできる宇宙船が必要です。それは宇宙人とて同じはずですよね(笑)
通信だけでもなんとかならないのか?宇宙人からの電波を受信する試みは長く続いていますが、結果が出ないまま時が過ぎ、予算が削られて行く状況。

諸説いろいろありますが、宇宙人と交信するには遠すぎる、人類の歴史と寿命で捉えるには、宇宙は広すぎるのだろうなあ…少なくとも今の人類では…と思います。
そう考えると、宇宙人が地球征服にやってくるとか、スターウォーズとか、高度な知的生命体が原始的な人類に見かねて、活気的な技術をもたらしてくれるとか?…夢のまた夢かなあ(笑)

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「図書館の魔女 」高田大介著

2017年07月08日


鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!第45回メフィスト賞受賞作。

分厚い文庫4冊、読み応えです。
しっかり構築された世界観は、指輪物語やゲド戦記、十二国記のような。その分、理解が進まないと読みにくいところもあります。使い慣れない漢字、熟語の多さも、読みにくさかも、特に1巻目は慣れていないので。
ここまで漢字を多用しなくともと思いましたが、文章や文体こそがファンタジーを形作るもの、漢字の海をかき分けるように読み進むうち、唯一無二の世界がここにあるのだと感じられます。
ファンタジー読みでないと取っ付きにくいかもしれませんが、いったんその世界に入ってしまえば、この世界で繰り広げられる壮大なストーリーにはまります。
ただ「双子座」にミトウナ、「自動人形」にアウトマタなど、漢字を外国語読みさせることには抵抗もあります。

知と歴史の集積、図書館はいわば生きたデータベースであり、それらを読み解くために高度な知力を要求すします。その知力を持った者にだけ開かれるのがこの世界の図書館。
図書館という閉じた世界のお話かと思えば全く違う。「魔女」が登場しても、それは魔術でも呪術でもなく、むしろ魔術や悪しき因習を、古今東西の知識や理論でぶち破るのがマツリカたちの仕事。そこにスカッとします。
マツリカたちは、知と理論(時に理屈)を駆使し、策を講じながら紛争の解決、そして世界を変えようとする。それが本書の大きなストーリー。伏線だらけですが、基本は勧善懲悪だと思います。

マツリカは、折にふれ言葉とは何かと問いかけます。
言葉とは情報を伝えるための道具としてではなく、言葉の持つ力に目を向けろと言います。その言葉により形作られた文章、本、…その集積である図書館、そこは資料庫ではなく、知のパワーが満ちているところ。
言葉は伝える本、人がいる限り滅びない。
それは作者高田大介の「言葉」への愛、本への愛なのだと思います。高田は言語学者らしいのですが、なるほどと思いました。
そう考えると、長編も難解な言葉の多用も、SNSの短い文章や顔文字で済ます現代社会への、挑戦的な提言なのかもしれません。

キャラクターもおもしろいです。
言葉を発しない「図書館の魔女」は傲慢とも見える少女、老猾な思考と幼さのギャップ萌え(笑)
2人の司書も個性的で、仕えるというより図書館への愛とわかちがたい友情で結ばれています。キリヒトの先生、政治家、衛兵たち。みなそれぞれに訳ありです。図書館は一つのチームなんですよね。

魔女に仕える事になった田舎育ちの少年キリヒト、マツリカとキリヒトの主従関係の変化も大切なストーリーです。2人が秘密の地下道を探索する場面にわくわく。運命に翻弄され大人にならざるをえないキリヒトが切ない。
そして少年少女の恋心は、頼りなくも未来への希望そのもの。

ラストの長いエピローグは、登場人物たちをねぎらうようなあたたかさがあり、救われます。
世界は良くも悪くも常に変化しつづける。人は出会いと別れを繰り返し、少年少女は成長し、その関係も変わっていくのだろう。
この世界にはまだ語られていない続きの物語がある、そんな読後でした。





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椎名 誠「ぼくがいま、死について思うこと」

2017年06月23日


「自分の死について、真剣に考えたことがないでしょう」67歳で主治医に指摘された。図星だった。うつや不眠を患いながらも、死は、どこか遠い存在だった。そろそろ、いつか来る〈そのとき〉を思い描いてみようか――。シーナ、ついに〈死〉を探究する! 夢で予知した母の他界、世界中で見た異文化の葬送、親しい仕事仲間との別れ。幾多の死を辿り、考えた、自身の〈理想の最期〉とは。

椎名さんの死生観、生き様…かと思って読むとちょっと違う。
人生で出会った死、そして旅の多い作家として出会った世界の死の儀式、国も宗教も文化風習も違う、その土地それぞれの死のとらえ方。
本書における「死」とは、主に死者の弔い方、死にまつわるさらっとしたエッセイです。

肉親の死、友人知人の死、年を重ねれば、そうした場面にいずれ向き合うことになります。そして、自分よりずっと若い人の死には胸が痛みます。
世話になった編集者の葬儀に違和感を覚える椎名さん。
そのあたり、あるあるって感じですかね。
私は日本のお葬式しか参列したことがありませんが、演出が過剰だったり、このお葬式はどうかな?と感じることはあります。
しかし、特別な準備、特別な存在(有名人)でもないと、葬儀にはあまり選択肢がないんですよね(汗)いや、できることはできるけれど、費用かかりすぎたり、いろいろ大変なだって意味です。
そういうことは、大人になるとわかってきますよね。
最近でこそ葬儀をしない、あるいはコンパクトな葬儀もありますが、私の住む田舎ではまだ珍しい。そうした確固としたナニゴトかをしたいわけでもないですが(汗)

参列する方としては、挨拶が退屈だったとか(汗)、坊さんが美声だったとか…そんな記憶ばかりが残ります。
たとえば同じ仏教でも宗派よってかなり違う。その違いも興味深いと感じる事もあります。
お葬式は、残された者がけじめをつけるためのものかなあと、個人的にはとらえています。故人と残された人の価値観や考え方であり、派手でも地味でも、違和感覚える演出であっても…正解はないと思います。

椎名さんの死生観とまでは深くはないけれど、リアルタイムでウン十年、著書を読んできた身としては…旅して汗流してビールがウマい!の椎名さんが、こうした内容を落ち着いて考えている。そんな年代だということが感慨深いです。
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エイミー・ベンダー著「レモンケーキの独特なさびしさ」

2017年06月04日


9歳の誕生日、母がはりきって作ってくれたレモンケーキを一切れ食べた瞬間、ローズは説明のつかない奇妙な味を感じた。不在、飢え、渦、空しさ。それは認めたくない母の感情、母の内側にあるもの。
以来、食べるとそれを作った人の感情がたちまち分かる能力を得たローズ。魔法のような、けれど恐ろしくもあるその才能を誰にも言うことなく――中学生の兄ジョゼフとそのただ一人の友人、ジョージを除いて――ローズは成長してゆく。母の秘密に気づき、父の無関心さを知り、兄が世界から遠ざかってゆくような危うさを感じながら。
やがて兄の失踪をきっかけに、ローズは自分の忌々しい才能の秘密を知ることになる。家族を結び付ける、予想外の、世界が揺らいでしまうような秘密を。
生のひりつくような痛みと美しさを描く、愛と喪失と希望の物語。


作った人の感情や思いまで感じ取ってしまう、ある日、特殊な能力を持ってしまったローズ。そりゃ魔法みたいなお話か?…と思えば、この本はファンタジーでもミステリーでもないんですね。
ローズにとって、作る人の心を感じ取ってしまうその能力より、一見明るくてやさしい母の心が、焦燥感や怒り、むなしさでいっぱいであること(を知ってしまった事)の方が衝撃なのです。

母の料理からネガティブな感情が消える事はなく、食事はローズにとって苦痛でしかなくなってしまいます。
それだけでなく、ファーストフードを食べれば工場生産独特の化学的な味が、安価な料理を食べれば、野菜を収穫した貧しい農夫の心まで感じとってしまう。
ローズは食べる事がすっかりいやになってしまいます。
子どもにとって、家庭の料理が苦痛になってしまうと、ある意味居場所さえもなくなってしまうのだなと思う。
温厚な父、秀才だけど謎の行動をする兄、ボケているのか謎めいているのわからない遠くで暮らす祖母、平和で穏かに見えた家族も、気がつけばバラバラ。

料理もケーキも自分で作ればいいじゃないか…と大人である自分は思うわけです…。そして、その能力が開花したなら…それはファンタジーになるのですが、あいにくとそうはならない(汗)
ローズは普通に食べたふりをしながら、普通の家族を演じようとします。

時が過ぎ、ローズが大学生になろう頃、家庭はとうに居心地のいいものではなくなっているのですが、家族を唯一つなぎ止めるのは自分だと感じ取っているローズは、家を離れる事ができません。淡々と描かれているけれど、その思いが切ない。
兄の友人で唯一の理解者だったジョージも、数少ない友人も大人になり、それぞれの人生を歩み始めます。
そして兄の失踪、家族の様々な思いが露になっていきます。
ローズはひりひりとした日常を送りながら、少しずつ大人になり、そしていくつかのきっかけから仕事を得て、自分の人生を歩き出そうとします。
ローズの人生は、小説として読むとはがゆいほど受動的です。しかし、未来への一歩はやはり自分で踏み出すもの、そこに希望があるように思えました。
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有川浩著「旅猫リポート 」

2017年03月22日


野良猫のナナは、瀕死の自分を助けてくれたサトルと暮らし始めた。それから五年が経ち、ある事情からサトルはナナを手離すことに。『僕の猫をもらってくれませんか?』一人と一匹は銀色のワゴンで“最後の旅”に出る。懐かしい人々や美しい風景に出会ううちに明かされる、サトルの秘密とは。永遠の絆を描くロードノベル。

書店で平積みになっていた文庫の表紙に、大好きな村上勉のイラスト、「旅猫リポート」ってタイトルもすてきです。有川浩はコロボックルシリーズの続編も書いているので、それかなと一瞬思いました。
猫好きな方なら。単行本の時点でとっくにご存知なんでしょうが、私は最近、出版情報にも疎くて、この本のことは知りませんでした。
全く予備知識なしに読んで…やられました(涙)

動物と暮らすということは、動物だけでなく人間同士でもですが、必ず出会いと別れがあります。
言ってみれば誰にでもある出会いと別れ、ごく普通のことなんですが、こんなふうに描かれると、出会いと別れもただただ愛おしくなります。
猫にも人にも、それぞれの生き方があり、それぞれの思い(あるいは本能?)がある。所詮思い込み、妄想といわれてもしょうがないのですが。

旅を通して、サトルは自分の身に起きた出来事や人生を振り返る。読む側としては自分の人生を肯定できるだろうか?と問われ続けているようにも感じます。
幸せと思うか、不幸と思うかは、その人の受け止め方、心のありようなのかなとも思う。

旅と回想、主人公サトル、猫のナナ、友人たち、それぞれが語り部となり物語は進みます。その切り替えがアクセントとなって、読みやすい。
ブラウン管テレビの上があったかくて気に入ってしまうとか、小さなエピソードも楽しい。雨の冷たさ、きらきらとした日差し、海、ごちそうの匂い、天候や空気感の描写も、有川浩うまいなあと思います。
しいていえば、こんなに聡明な猫は、なかなかいないと思うけどね(笑)



絵本版はルビ付き、小学生低学年から。
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おまけ
猫が主役(語り部)の物語は多数ありますが、私がおすすめするなら、ポール・ギャリコ。
動物はだいたい好きな私ですが、あからさまな猫最上主義、猫賛美はちょっと苦手です。
ポール・ギャリコの作品は猫と人との関係、その関係から生まれる何か、大きく言えば人生を問い直すような…旅猫リポートもそうですね。







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