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日曜美術館「記憶に辿りつく絵画~亡き人を描く画家~」

2011年06月28日
写実の画家諏訪敦さん、日曜美術館が取り上げる画家としてはかなり若手、ホキ美術館の開館などからもわかるように、最近注目をあびている写実表現の画家です。
といっても、画家はそのような単純に言い表せるようなものではなく、表現手法が写実であるだけ、何を描くのが、描きたいのか、そこで画家のあり方が大きく違ってくるのではないでしょうか。
どのような画家でどのようなポリシーを持っているかは、公式サイトやインタビューなど、ネットでもかなり詳しく知ることができます。

suwa hana
諏訪敦「花を食べる」(部分)2011

諏訪敦 公式サイト

今回の日曜美術館は、ちょっと異色でした。
諏訪さんの元に、2年前海外で不慮の事故にあい亡くなった愛娘を描いて欲しいという、肖像画の依頼がきました。
「亡くなった娘を絵画で蘇らせて欲しい」
両親は社会的地位もありそうな方たち、頭でわかっていても、今も娘の死を受け入れられないでいる、そのように見えました。
諏訪さんは肖像画家ではないのですが、引き受けた背景には、諏訪さん自身の父(故人)との葛藤があったとありました。ただこのあたりの経緯は、画家としての好奇心とか、このようなオーダーで自分がどうなっていくのか?そういう未知へのチャレンジが大きいのではと感じました。
諏訪さんは、膨大な写真や資料を預かる他に、彼女の手がかりを求め徹底した取材をします。両親までもデッサンし、骨格や細部から娘の面影を探します。
そして描き始めますが、制作は時間がかかるということもありますが、日が経つにつれ、諏訪さんは両親の期待に応えられるだろうかと悩み始めます。
一方依頼した両親は、あの時はこうだった、この時はこんなことがあった…快活だった娘のいい思い出ばかりが浮かび、自分たちの中の理想の娘像が大きくなっていく。番組を見ていても肖像画への期待の大きさ、高まりにとまどいます。
番組を見ている私たち第三者にとっては、肖像画が完成しても現実は変わらないわけだし、だからどうなるのだろうと思いながら見ていました。
画家としてどう描くのか、何を描くべきなのか、迷った諏訪さんは、家族を事件や事故で突然亡くした遺族の団体などにも話を聞きに行きます。
「残された家族が見たことがない娘を見たいのでは」という所に、一つの手がかり(?)を見いだします。

制作は6ヶ月に及びました。番組は家族と画家を丹念に取材しています。
諏訪さんの迷い、徹底した描き方がすごくて、その意味では日曜美術館らしい内容なのですが、それよりも肖像画を依頼している家族の時間の流れと、娘の死を受け入れ、新しい記憶として再構築していく両親の物語ではないのかと思いました。
肖像画は一つの手段であり、画家はその為のツールなんですよね。

冷静に見ていたつもりでしたが、完成した絵を前にした両親の姿に、こちらの気持ちも揺さぶられます。
スタジオの千住明氏が今にも号泣しそうでした。クリエーターという共通項を持つ千住氏にとっても考えさせられる内容なのでしょう。
アートに何ができるのか、アートのあり方を考えさせられました。

NHK 日曜美術館
記憶に辿りつく絵画~亡き人を描く画家~

2011年6月26日(日)9:00~10:00
再放送 
2011年7月3日(日)20:00~21:00

諏訪敦絵画作品展 ~ 一蓮托生 ~
成山画廊(東京都千代田区) 6月9日~7月16日

諏訪敦絵画作品展 ~ どうせなにもみえない
諏訪市美術館 7月28日 ~ 9月4日

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