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「空の智慧、科学のこころ」茂木 健一郎、ダライ・ラマ十四世

2012年01月18日

空の智慧、科学のこころ (集英社新書)空の智慧、科学のこころ (集英社新書)
(2011/10/14)
茂木 健一郎、ダライ・ラマ十四世 他

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〈AMAZON内容紹介より〉
慈悲と非暴力の教えを説き続けるダライ・ラマ十四世は、科学にも深い関心を持っている。世界のリアリティを追究するという点に宗教と科学の接点を見出す脳科学者、茂木健一郎と、仏教と科学の関係、人間の幸福について語り合う。また、『般若心経』の深遠な教え、困難に出合っても心の平穏を失わない方法、空の本質について、法王がその根本から分かりやすく解説する。世界的な宗教指導者と、人気脳科学者が、人間が生きるための智慧をあらためて見据える書。


私の目当ては、脳科学者茂木健一郎氏との対談。科学と宗教の対話、しかも法王と茂木さんであればおもしろいに違いないと思ったわけです。
本書の前半3分の2くらいまでは、ダライ・ラマ14世による般若心経の解説ですが、私は般若心経については勉強不足ですので、読みはしたもののどれくらい理解したかは心許なく、この部分の感想はパスします(汗)

法王は「心と生命会議」(1987年より開催)で、過去30年以上にわたり科学者と対話を続けている。
仏教の教えは、私たちが幸せになるために有益な感情を説いている。自分の心を訓練することが幸せをもたらし、逆に幸せを破壊する有害な感情をどうやって減らすかを教えている。
そのためには、人間の様々な精神構造と心がどのように機能しているかを正しく知る必要がある。それを「仏教の心理学」と呼んでいる。
(本書前半の般若心経の解説が「仏教の心理学」に対応していると思われます)

仏教の体系には3つの顔がある。仏教科学、仏教哲学、宗教としての仏教。
仏教には科学的な側面があり、法王は近代科学の科学者と対話を続け情報交換をしている。それは「科学と仏教の対話」ではなく「近代科学と仏教科学の対話」と呼ばれるべきである。
宗教としての仏教は近代科学とは関係がないが、仏教科学と仏教哲学は万人共通の普遍的な部分の学問である。
「心と生命会議」の科学者は欧米、西洋の科学者がほとんどで、法王は仏教徒かどうかは別として、(茂木さんのような)伝統的な仏教国の科学者と対話してみたかった。

…ということで実現したのがこの対談(2010年11月・金沢)
仏教の科学的側面に強い興味をもつのは、好奇心が強く新しもの好きな法王らしい。またそういう所が魅力的なんですよね。
法王はダライ・ラマ14世にならなかったら(選ばれなかったら)科学者になってみたいと常々話しています。

瞑想をしている時の脳の状態は平穏である。その心を維持できれば、困難に直面した時も、現実を正しく見ることができ、現実的な対応が出来る。
このあたりのことは、昨年秋の法王の講演でもおっしゃっていました。
仏教では、起きている時の意識を「粗いレベルの意識」、夢を見ている時を「微細なレベルの意識」、夢も見ない深い眠りの時を「非常に微細なレベルの意識」としている。

法王が茂木さんに質問します。
それぞれの意識の時、脳はどんな状態か?
また、科学者は、意識は脳とニューロンによって生じると考えているが、仏教では微細なレベルになるほど意識はそれ自体が独立して存在し、脳に影響を与えることが出来ると考えている。

なぜ意識が生まれるかは、まだ全くわかっていませんと、あっさり答える茂木さん。
脳科学者は単一のニューロンに意識はないと考えている。脳には一千億以上のニューロンが存在し、相互に関連し合って意識的な体験を生み出している。しかし意識がどうやって立ち現れてくるのかはわかっていない。
近代科学は素粒子レベルのような個々の事象にこだわりすぎているのかもしれない。
仏教哲学においてはおそらく逆で、相互の関連性をから個々の事象が登場してくると考えているのではないか。

法王によれば、「心と生命会議」で脳と意識について、科学者・チベット人修行者と共に研究を進めている。
キリスト教国で育った人たちは、この人生は神によって創られたもので、神がこの体を創られ、魂を創られ、意識ができるわけで(神が与えたものという意味)、意識がどう続いていくかどうかに討論の余地はない。
仏教徒の考え方は違っているので、仏教国の科学者が研究に関われればおもしろいと思っている。

ここで結論が出る対談ではないのですが、脳を仏教的なアプローチで捉えるのはおもしろい見方だと思います。
というのも心理学的なアプローチは日本であっても、西洋の文化に培われてきたものをベースにしているわけで、それはある一つの見方。東洋的な、仏教的な側面から心を捉えようという試みは、あまり聞かないんですよね。
とても新鮮な見方だなと思います。

チベット問題は最優先としても、仏教の科学的な側面を生かし、宗教や国家の枠を超えて、自由や幸福を追求し続けることがダライ・ラマ14世のテーマ。そのためにも、宗教と科学は対立しない、よりリアリティに則した考え方(現実的な手段)で仏教をとらえ、学問としての価値も高めたいと思っている。
チベット仏教最高指導者でありながら、仏教にここまで熱を入れて科学的なアプローチをする法王はやはりユニークではないでしょうか。茂木さんも科学という境界にとらわれない人なので、おもしろい対談になりました。

参考・以前の記事(2011年11月09日)
Don't worry! ダライ・ラマ14世、郡山で講演


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