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梨木香歩「エストニア紀行―-森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」

2013年02月20日

エストニア紀行: ――森の苔・庭の木漏れ日・海の葦エストニア紀行: ――森の苔・庭の木漏れ日・海の葦
(2012/09/28)
梨木 香歩

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首都タリンから、古都タルトゥ、オテパー郊外の森、バルト海に囲まれた島々へ―旧市街の地下通路の歴史に耳を傾け、三十万人が集い「我が祖国は我が愛」を歌った「歌の原」に佇む。電柱につくられたコウノトリの巣は重さ五百キロ。キヒヌ島八十一歳の歌姫の明るさ。森の気配に満たされ、海岸にどこまでも続く葦原の運河でカヌーに乗る。人と自然の深奥へと向かう旅。

初出は複数の雑誌に連載されたエストニアの紀行文。
エストニアの伝統文化とふれあい、本来はコウノトリを探すという目的なのかな?ただコーディネーターもカメラマンもいるしルートも決まっているけれど、強い目的意識があるようには感じませんでした。スリリングな展開があるわけでもなくなんとなく行き当たりばったり感もありつつすすみます。
そもそも、旧ソ連バルト3国のエストニアという国を、私はよく知らないのだなと改めて思います。
目で見て感じたまま、梨木さんがエストニアという国で、人のみならず、形のない文化や自然と対話をしてきた…というのが本書の印象でした。

エストニアの首都タリン、ここはヨーロッパでもIT産業がさかんな都市、エストニアはバルト三国の中では、比較的経済で成功した国になるらしい。
都会の雰囲気があったのは、本書の冒頭で到着したタリンの街だけ、ここからどんどんディープなエストニアに入り込んで行きます。
400年前に作られた旧市街の地下通路…と聞いただけですでにおどろおどろしいかも(笑)ただの観光案内人であるおじいさんが、地下の闇では自分の天下のようにふるまうのがおかしかった。

郊外へ移動する幹線道路で、我慢できずに車を止めてもらう梨木さん。観光とは無縁のなんてことない路肩の野原でただ草花に見入る。
「何気ない路傍にこそ、その国の自然の本質が現れている」
森の中のホテルでは、いてもたってもいられず、長靴に履き替えて森に分け入る。腰をおろし森の声に耳を傾ける。
たった一人で森にいて、森と一体となって行くような時間。
たぶん、こういうことをしてしまう梨木さんだから、私は好きなんだな…と思う。

その土地の食材、郷土料理の数々。幽霊ホテルも読むだけなら楽しい(笑)
コウノトリを見ることも目的でしたが、それは思うよういかず残念でした。
そしてキヌヒ島の民族衣装のスカート。たくましいばあさんたちが登場します…どこの国も、田舎のばあさんは元気でたくましいですよね(笑)

海辺の街ハープサル出身の画家イロン・ヴィークランドのことは全く知りませんでした。1944年14歳の時、戦争からのがれるため、エストニアからスウェーデンに亡命したらしい。
ヴィークランドは児童文学のリンドグレーンの挿絵を描いている人で、リンドグレーン作品はこの挿絵なしには考えられません。

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第二次世界大戦、ソ連時代、チェルノブイリの原発事故、エストニアの歴史もまた複雑です。
多くの人々は、生まれた土地で育ち一生を過ごす、それがごく普通の人生ですが、時代によっては難しい。

様々な人や文化との出会いがでてきますが、私が心引かれるのは、やはり梨木さんの感じたままの自然風景です。
苔むした深い森の静寂と野生動物、どこまでも広がる海岸沿いの芦原の空間の広がり、あるがままの自然と心を通わせる感覚は独特のものがあるような気がします。
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こんな番組があるようです。
世界遺産 時を刻む「エストニア 心をつなぐクリスマス 郷愁」
NHK [BSプレミアム]
2013年2月22日(金) 午後10:00~午後11:00(60分)
クリスマスシーズン、エストニアの首都タリンとバルト海の島・キヒヌ島を訪ね、知られざる国の姿とふるさとに強い愛着を抱いて生きる人々を描く。


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Comment
「タリン」
梨木香歩さんのこの本、やはり惹かれるものがありますね。読みたいです。
エストニアのタリンといえば、ジュニアGPがよく此処でありませんか ?確か3~4年前には、欧州選手権も開催されたかと思います。
その頃だったか…歴史のあるタリンの街と、そこで現在の最先端の技術を誇るIT産業のこと、地方の素朴な暮らしなど、エストニアを紹介する映像を見たことがありました。
GPシリーズの他の都市は、大体想像がつくのですが、「タリン」だけはどうもよく解らない、謎の都市だったので、興味があったのです。
今までも、これからも、訪れることなどきっとない地への想像は、膨らむばかり…
>美絵さん
この本、どちらかというと地味ですが、梨木さんのファンならぜひ。
エストニアのタリン…そうなんです、JGPではおなじみの土地ですよね。でもなにか知っているかというと…(汗)ユーロが開催された時は、地元出身のグレボアをよく覚えてます。

エストニア…と言われても、どこだっけ?というくらいわからないですよね。
旧ソ連というより、北欧に近いイメージですね。

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