美術館文化講座「色の命、命の色」

2014年06月05日
郡山市立美術館
美術館文化講座 平成26年度第1回アート・テーク 
「色の命、命の色」2014年5月24日
講師/志村ふくみ氏(染織家、重要無形文化財保持者)
   志村洋子氏(染織家)
自然界には豊かな色が在る。その一つ一つは、言葉と一緒になって日本の色となった。 色は匂い、移ろい、生きている。制作と思考から紡ぎ出された色への深い思いを語る。

郡山市立美術館の美術講座、だいぶ日にちも経ってしましまいましたが、とても充実した内容でしたので、まとめておこうと思います。
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人間国宝志村ふくみさんは90歳、月並みですがしっかりしてらっしゃるという印象です。
志村さんが染色を志したのは33歳、一人で生きていくための職業として。
植物が蓄えている色を人間が引き出す、その過程は新鮮な驚きの連続で、素人として熱中した。その情熱が今まで続いている。

藍染めを始めたのは50年前、いつかは藍染めと思っていた。それまで染めてもらっていた紺屋が閉めるというので、かめをもらったのがきっかけ。お教えてもらいながらだが、難しい。そして娘の洋子さんが手伝い始めたそうです。
藍は生きている。苦労の連続だったとか。
洋子さんによれば、新月に仕込み、満月に染める…月のサイクルに合わせるようになったら安定してきたと。
月の満ち欠けは人の気持ちのサイクルでもある。農業や職人が敏感なのはよくわかってきたと言います。
日本人の藍への思いは強く、生徒さんたちの大半が藍が好き、やりたいと言うらしい。
「藍はたてる(発酵)」
染めの過程は神秘的で、闇と光をいったり来たりする、神聖で宗教的な感じがする。
洋子さんは、ゲーテの色彩論などを引用しながら理論を構築しています。同時にふくみさん以上に感覚的、精神的なものを求めている方だなと、なんとなくですが感じました。

植物の緑から直接緑は取り出せない(緑に染められない、緑は青と黄色かけ合わせ)
花の色も(直接的には)出ない。
志村さんは、この世に出てしまった色は手に入らないのだと言います。

染色とはなんと繊細で苦労が多いことか、紅花染めの苦労も。
よく知られている「桜色」のエピソードも。桜色は咲く前の枝からしかとれない。しかし思い通りにはいかない、自然にまかせるしかない、マニュアルもない。
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会場に渋く淡い桜色の着物が展示してありました。
この桜色は、福島の桜の名木、滝桜の種から育てた木の間伐材から染めたらしい。3月、固いつぼみのある枝からでないと桜色は出ないという。
美術館の佐治館長が志村さんに弟子入りしていたという縁から、このようなことができたそうです。
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日本人は色の言葉が好きだと、万葉集、古今和歌集…和歌の美意識。
源氏物語では女性の名は「紫」。光源氏は「黄(光)」、紫を引き立てる色。染織家から見れば、源氏物語は色彩の文学ということになるらしい。
日本の四季、うつろう色は美しい、日本人はそこから色彩感覚を磨いてきたのではないか。
平安の頃の十二単はかさねの色目、色の組み合わせだけで人格や教養も表現してきた。
水墨画に色を見るのもまた日本人的ということだろうか。

志村ふくみさんのことは、著書や個展などである程度知っているつもりでしたが、話を聴いていると、だいぶ印象がかわりました。
志村さん親子は、染色という伝統工芸、職人の世界を文化、芸術に高めようとしているのではなく(…それだけでなく)、もっと精神的、観念的、自然と人の間をつなぐ存在を目指しているのではないだろうか。
自然を敬い、自然から頂いたものを、人の世界に橋渡しする、巫女のような存在。
お弟子さんたちの様子からも、上下関係など厳しい職人の世界という感じはしない。もちろん覚悟をもった方しかいないはずですが。

織りについて、志村さんは、縦糸と横糸だけの原始的な行為だと言えば、洋子さんは、絵が描けなくとも織りで表現することができる、自分の感情を込められる、自分の物語をつぐむことができると言います。
「染め」は楽しく、「織り」は修行、それが創造のプロセス。

「だからこそ喜びもある」…この言葉を聞いた時、とても女性的だなと感じました。
職業に性差はなくていいと思っていますが(現実はどうあれ)、修行にも似た織り、その淡々とした手仕事に没頭し、時間を忘れて打ち込める、そこに喜びを見いだすのは、やはり女性のような気がします。
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最後に、志村ふくみさん、洋子さんが創設した学校、アルスシムラについて。
詳しくはHPに掲載されていますが、開校にあたっては、高齢であることなどからずいぶん反対されたと、以前のドキュメンタリー番組で見ました。
時代も移り変わり、これまで自然に受け継がれていた伝統や技はどこへ行ってしまうのか、それに伴い日本らしい精神性や美意識が消えていくのではないか、そういう危機感があるのだろうと思います。

アルスシムラ
アルスシムラの願いは「魂の教育」です。本来、芸術家とは、単なる自分の内面世界の表現者というだけでなく、自然の探求者としての側面をもっています。自然の不思議さに驚き、真理を追究しようとする姿勢は芸術家の特質です。アルスとは、もともとラテン語で「技術」「芸術」を表わします。授業では、染めたり織ったりの手仕事を通して物に触れ、物の命に近づく、驚きと憧れの体験を大事にしていきます。心が躍動する色彩体験は、芸術家としての魂を育てる最高教育です。学びの場は日本文化の中心地・京都にあります。そこでの染織体験を通して自然に目覚め、ひとりでも多くの方が自らの創造性を育てていかれることを願っています。
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アルスシムラでは「ふくしま」奨学生(授業料免除など)を募集中。
復興支援として、福島県在住、福島県出身の入学希望者から若干名。選考はなかなかハードル高そうですが。
募集は9月から、詳しくはお問い合せ下さいとのこと。

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(1993/12/24)
志村 ふくみ、高橋 巌 他

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