冷たい炎の画家 ヴァロットン展

2014年09月05日
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冷たい炎の画家 ヴァロットン展
2014年6月14日(土)~9月23日(火・祝)
三菱一号館美術館
本展は、日本初のヴァロットンの回顧展です。オルセー美術館およびフェリックス・ヴァロットン財団 の監修による国際レベルの展覧会として、グラン・パレ(仏・パリ)、ゴッホ美術館(蘭・アムステルダム) を巡回。そして2014年という日本・スイス国交樹立150周年の記念すべき年に、当館において開催します。
独特の視点と多様な表現を持つヴァロットンの作品は、100年以上たった今でも斬新で現代的です。 胸騒ぎのする風景、不安な室内、クールなエロティシズム―。まるで解けない謎のように重層的な彼の 作品は、観る者に様々な感情を抱かせます。本展では約60点の油彩と、約60点の版画の計約120点を 展覧します。
当館はヴァロットンの版画作品を1 8 7点所蔵しています。ヴァロットンの版画作品は世界中に点在し、 まとめて所蔵している美術館やコレクターがほとんどありません。本展では、《アンティミテ》《楽器》 《これが戦争だ》など、希少性の高い連作の揃いを含む重要な作品をお楽しみ頂けます。


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《20歳の自画像》 1885年

ヴァロットンは詳しく知りませんでしたが、今回の企画展を取り上げた番組を複数見ていたので、予習していたようなもの。
その意味では「驚き」はしなかったけれど…「困惑」というか摩訶不思議な画家だと感じました。
若き自画像をみると、敬虔なカトリックの家に生まれた生真面目な青年が精進して画家になった、そんなふうに感じますね。

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トルコ風呂 1907年

で、大人になり作風が↑こんなふうになるのはありだと思う。
白い浴室も裸体の女性も冷たい感じ、こんなにいても、色っぽさはあまりないですよね。
ヴァロットンの描く女性はみなよそよそしい、距離感を感じます。

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肘掛け椅子に座る裸婦 1897年

同じ裸婦でも唯一違って見えたのはこちら、若さや美というイメージではないけれど、暖かみを感じます。実物を目の前にしないとわかりずらいか…。
解説に「モデルへの素直な愛情のようなものが感じられます」などど、こりゃ例外だみたいな書かれようがなんとも(苦笑)

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《月の光》1894年

装飾的、そして幻想的な美しい作品、これもヴァロットン。日本画のようだなと思ったら、雲の描き方は日本画を参考にしたらしい。
これだけ見ると、人物画に興味ない画家なのかと思ってしまうかも。
他の風景画はいずれものっぺりして、空虚な印象、自然を描いても、自分の中の虚無感を反映しているような。

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《夕食、ランプの光》 1899年 

妻と妻の連れ子との夕食を描いた作品。こちらを見る女の子の目に冷たい闇が…これずばり怖い絵ですね(汗)
裕福な画商でもある妻と結婚し、恵まれたかと思えば、心が通うような家庭ではなかったもよう。
家族や親戚たちを描いた作品がいくつかありますが、いずれの作品もヴァロットンは疎外感を感じていたのだろうと想像させるものばかり。まあ、よそよそしい雰囲気もそれが通常運行って家庭もありますし(汗)、自己責任ではあります…大人なんだしね。

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《ボール》1899年 

今回の目玉でもある「ボール」。なんとも力が入っていないように感じます。そしてその手応えのなさが、見放されたような不安を感じます。別の視点からは他人の不幸を遠くから眺めているような…じわじわと怖いです。
20歳の頃、あの勤勉で礼儀正しそうな青年に何があったのかと思う。

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そんな脱力感、無関心さが漂う作品を発表していた時代。木版画作品はクオリティが高い。緻密に計算され構図、バランス、デザイン的にもハイレベル。
ヴァロットン知らないと思ってましたが、木版画の作品はどこかで見ていることに気がつきます。日本では木版画の作品で知られていたらしい。
美しい作品ばかりですが、タイトルは「嘘」「お金」…またまた意地悪というか…
しかしそんな意地悪で他人の不幸を覗き見る趣味な志向が、ヴァロットンの本質なのかもしれないなと思い始める。

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《竜を退治するペルセウス》1910年 

時々わけのわからない作品が…
竜はどう見てもワニだし、ペルセウスは中年のボディビルダーみたいだし、美女アンドロメダに至ってはお風呂覗かれたおばちゃんみたいだし…(汗)けっこう大きい作品。

画家が時代と共に画風や視点が変り、全く別の画家のようになることは、よくあることですが、ヴァロットンの場合は、違うタイプの画家が同時代に脈絡なく混在している。
写実を極めた作品、脱力した油彩作品、全てが朦朧とした幻想的な作品、グラフィック的作品…等々。それゆえ評価しづらいのかもしれませんね。
器用な画家なのは間違いない。

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《貞節なシュザンヌ》 1922年 

こりゃ男を破滅に導く女の目です(苦笑)
こういうのを見ると、ヴァロットンは家庭にも女性にも恵まれていなかったのかなと思う(汗)
ただ、そういう一般的な幸せをそもそも望んでいなくて、他人の不幸に食いつく「日本の2時間ドラマ」的な意地悪な視点が、嘘や虚飾を物陰から見ている…みたいなポジションが、彼の望むところだったのかもしれない。

女性を描いた作品は多くありますが、愛情はあまり感じられないんですよね。
ヌード以外でも、戸棚を漁る女の後ろ姿とか、雑然とした部屋にいる女性とか、女性にとってみられたくないようなところを描く。やっぱり覗き趣味のような気がする。
どこまでも、深読みさせる画家、それがヴァロットンでした。


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