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立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む

2009年11月25日
ジャーナリスト立花隆氏が、がんであることは少し前に聞いていました。
最初に知った時、立花氏であれば、これを幸い自らを取材対象として突き詰めて仕事をするであろう事は容易に想像できました。
NHKの長期取材は、これまで立花氏がガイドを務める番組(特に医療、科学分野)を数多く放送してきたNHKならではの信頼関係があって成立したのかなと感じます。

はじめに、この番組はがん治療最前線…というような内容ではありません。
また、記事はあくまで私の感想であり、医療の立場から見たものでもありません。記述についてあいまいな点などはご了承下さい。

冒頭の方で、交流のあった物理学者戸塚洋二氏、友人でもあった筑紫哲也氏が、共にがんで亡くなっていることに触れています。
抗がん剤の効果はあるものの激しい副作用に憔悴している戸塚氏との最後の対談、このころから立花氏は自分の将来を考えていたのだと思います。
戸塚氏のがんとの戦いは、NHKのハイビジョン特集で放送され、私も記事を書いています。

物理学者 がんを見つめる 戸塚洋二 最期の挑戦(2009.7.10)

いつも冷静で客観的、自分の体に起こっていることですら、知的好奇心で向き合える立花氏ですが、親しかった友人筑紫氏のことを語りはじめると、言葉に詰まり顔をゆがめ、涙をこらえていることに、私はテレビの前でちょっとうろたえてしまいました。
筑紫氏の存在がいかに大きく、大事な存在であったかがわかります。

現在、がんの生存率はかなり高くなっており、今すぐどうこうではないのでは?と思っていました。
立花氏の膀胱がんは転移もなく、手術は成功しましたが、多発性であることから、かなりの確率で再発するということでした。
そして「人類はなぜ、がんという病を克服できないのか?」という、立花氏の思索の旅が始まります。

アメリカがん学会で取材、最前線の研究者によれば、がんの制圧にあと50~100年はかかるだろうとのこと。
また、近年がんについて仕組みを知ることは出来たが、治すことは難しいまま、生きている事ががんを生むと言います。
がんは細胞の異常増殖ですが、増殖させる遺伝子「がん遺伝子」は、実は生命の誕生・成長に必要な遺伝子であることもわかってきました。
たった一つの一つの受精卵が猛烈なスピードで増殖と分化を繰り返し、人の体を作っていきます。一つの細胞が分化し、あらゆる種類の細胞になる、この源になる細胞が幹細胞です。
がん細胞は、幹細胞に似た振る舞いをするという説があるそうです。

幹細胞を培養、または人工的に作ることができれば(iPS細胞)、トカゲの尻尾が生えてくるように臓器が再生し、移植問題などが解決することになるため、国内外で研究されています。
ところが日本でのiPS細胞の第一人者によれば、彼が開発した画期的なiPS細胞には、がん遺伝子が使われており、使えばがん発症の可能性が高く、それをクリアしなければ実用化はできないということでした。

では、人が本来持っている免疫によって、転移を防ぐことができないのか?というと、がん細胞はほぼ自分の細胞であるため、免疫が働かないらしい。
現在数多くの抗がん剤が開発されていますが、そういうわけでがんの機能だけを抑制、攻撃するのはほぼ不可能。抗がん剤の効果があるということは、正常な細胞、機能も攻撃しているということ、副作用も伴います。
抗がん剤はコントロールが難しいようです。

様々な取材を経て、立花氏が決断したことは、(自分は)抗がん剤を使わない…ということでした。
自分は今69歳、がんにかからなくても遠くなく死がある、じたばたしない。
自分はがんばらない、抗がん剤によって、生活の質を落とすくらいなら、好きなことして…ということのようです。
死ぬまで生きる力がある。
死ぬまでちゃんと生きる。

わかる、わかるんですが、一方でそんなこと言わず…もっと長く生きてほしい、やはりそう思ってしまいますね。

立花隆 思索ドキュメント
がん 生と死の謎に挑む

NHK総合2009.11.23放送
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Comment
抗がん剤の副作用はいかばかりか・・・予想だにできませんが、少しだけ想像する事は出来ます。
というのは私、妊娠中、その病院始まって以来2番目位に酷いと掃除のおばちゃんに言わしめた重症のつわりで入院だったので。
おばちゃんは10数年間変わらず病棟の掃除をしつつ毎日病室を巡回していたので、全患者の病状に大変詳しく、彼女の記憶によると、沖縄出身の誰かさんつわりが一番で私のが2番目に酷いと言う話でした。
激しい吐き気と絶え間ない嘔吐で1ヶ月ほど点滴していました。入院前も退院後も吐き続け、陣痛中にも吐き気がしたほどで、生んだらけろっと治りましたが、喉が胃液で荒れ爛れて、産後のお祝い膳を食べられなかったのが残念だった記憶があります。
入院中、本が読める程度になった時、そのおばちゃんがもって来てくれた、捨てられるはずだった本の中に、癌と戦った医師が生前書いた本が混じっていました。そこには抗がん剤との激しい戦いが綴られていました。病気を治すために打つ抗がん剤の点滴。体に入って行くに連れて必ず襲ってくる辛い副作用。医師であるその人が自分の点滴を抜きたくなる騒動を抑えます。私自身も、水すらも飲めず絶え間なく吐き続けた重度の長期脱水状態で、それを治す為に24時間点滴をしていました。自分と子どもを守る為の点滴、ですがそれで水分が入ると言いようもなく吐き気が増幅して点滴を抜きたい騒動にいつも駆られていました。思わずその本の抗がん剤の点滴と自分のそれを重ねてしまう自分がいました。

語られている抗がん剤治療は、おそらく私たちが想像できない程に壮絶なものなのでしょうね。手術も治療も語られない部分が多くて、経験すると何故みんな黙っていたの?と思わされる事だらけです。立花さんはきっと壮絶な筑紫さんの戦いを見ているだけでも辛かったんだろうなと、なんとなくそんな風に私は感じました。本当はそんな単純な理由ではないのかも知れませんが。
>エミりさん
つわりも、重症となると大変らしいですね。エミりさんも入院なると相当だったんですね。
そういえば、つわりって、昔からわかっているのに、原因も何のためにあるかも、未だにわからないらしいですね。人間の体は、まだまだ不思議なことがたくさんあるようです。

そこそこ生きてると、がんにかかる人が身近に一人二人はいるもの、それくらいありふれた病気なんですが、怖いことに変わりありません。
がんの治療も、大きな手術から内視鏡手術、そして将来は抗がん剤治療が主流になってくる
と聞いたことがありますが、抗がん剤の激しい副作用を知ると、いろいろ考えてしまいますね。

抗がん剤治療も、延命処置にしても、どう生きるかは自分が決めていいと思うし、尊厳みたいものかなとわかっているのですが、好きな人には一秒でも長くと思ってしまうのは、私がまだ無知だからかなあ、なんてことも考えます。

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