映画『スポットライト 世紀のスクープ』

2016年05月19日
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映画『スポットライト 世紀のスクープ』公式サイト
映画『スポットライト 世紀のスクープ』予告篇
「アカデミー賞作品賞受賞作=難しい映画」なんて誰が言った?超・特大スキャンダルをスッパ抜くまでを描いた《社会派なのにエンタメ》の1本!
新聞記者たちがカトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を、「扉をたたく人」のトム・マッカーシー監督が映画化し、第88回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した実録ドラマ。2002年、アメリカの新聞「ボストン・グローブ」が、「SPOTLIGHT」と名の付いた新聞一面に、神父による性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過していたというスキャンダルを白日の下に晒す記事を掲載した。社会で大きな権力を握る人物たちを失脚へと追い込むことになる、記者生命をかけた戦いに挑む人々の姿を、緊迫感たっぷりに描き出した。第87回アカデミー賞受賞作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で復活を遂げたマイケル・キートンほか、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスら豪華キャストが共演。

なかなかに渋い映画…だと思います。
ボストン・グローブが、神父による性的虐待事件を、管轄するカトリック教会が長年隠蔽してきたことを暴いた、実話に基づく物語。
児童虐待というテーマも腐敗した権力を暴く記者たちのヒューマンドラマも、フィクション、ノンフィクションいろいろあり…わりとありがちですが、それだけではこの映画のおもしろさを半分も語っていないと思う。
この映画の斬新さは、地方都市特有の空気です。

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冒頭、タイムズの傘下になった地方紙グローブに、親会社タイムズからユダヤ系の編集局長に赴任してくる。いよいよリストラかな?なんて社員は考えたりするところからリアル。
で、この局長がカトリック教会の神父による児童虐待を取材したらどうかと提案します。過去にもとりあげた記事(裁判記事)なので、今さら?と記者たちは考えるのですが、まあ、そう言うなら…みたいな感じで取材が始まります。

主な登場人物は、記者、カトリック教会の神父、枢機卿、弁護士、被害者。
ボストンにおけるカトリック教会は、正義を説き、母子家庭や貧困など社会的弱者を救済している。いわば地域の道徳や良心の象徴。
宗教的に関心は薄れても、教会や神父は人々から厚い信頼を得ています。うっかりそこに突っ込もうものなら、大元が巨大組織であるだけにひどい目に合うかもしれない…。

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グローブの記者のほとんどは地元出身、地域の教会もそこをとりまく人や企業も、よく知っています。小さな社会です。
新聞の取材先は、子どもの頃からよく知っている企業だったり、高校の同級生や先輩後輩がいたりする。「やあ久しぶり〜」なんて感じに、親身に取材し、いいことがあればあったかく報道する。
女性記者は子どもの頃、信心深い祖母と日曜日に近所の教会に通っていた。
後半、ある記者は、自宅の近所に問題の神父が住んでいることを知り、子どもに近づくなと伝えます。
新任の編集局長が、慣例に従いボストンのカトリック教会トップの枢機卿にあいさつに出向くと、ボストンのためにお互い協力しましょうなどと言われる。
報道とはいえ、地方紙と社会は、良くも悪くも持ちつ持たれつの関係。地方とはそのような社会で、それは私が地方に暮らしているので、わかりすぎるほどよくわかります。
そうした地方都市ボストンの社会的背景が丹念に描かれているのが、この映画の最大の魅力ではないだろうか。

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児童虐待は、誰が見ても悪、しかし社会の基盤を揺るがしかねないカトリック教会の不祥事を、記者たちは暴くことができるのか?
教会には優秀な弁護士がついていて、情報の開示は難しい。
ところが、取材過程で次々とあきらかになる事実に、記者たちは自分たちが追うネタの大きさと深い闇にあぜんとしていきます。
これ以上被害者を出したくない、地道な調査と取材、記者たちに熱が帯びてきます。
課題は一部の神父の悪行をさらすことではなく、事件のほとんどを隠蔽して来た組織ごと暴くことです。気がつけば、非協力的だった弁護士も、ずっと以前からヒントをくれていた…。過去の記事にもその答えが隠されていた…。
そしていよいよスクープが…
というその時、9.11が起こります。イスラム過激派によるテロは、欧米=キリスト教社会に向けられたもの。ボストンの枢機卿は感動的なスピーチで人々の心をつかみます。
ここでスクープを出すわけにはいかない。取材も一気に冷めてしまう。
やがて…機が熟す時がやってきます。

これはボストンを舞台にしていますが、この報道をきっかけに、カトリック教会の隠蔽された事件が国内外であきらかになっていったそうです。
映画のもう一つの見所は、報道のあり方でです。
スクープ映像は視聴者提供、記事やニュースの元ネタがネットの不確かな情報…なんてこともざらにある今、報道は報道の仕事をしているのか?そんな風に思うことも少なくありません。
速報性という意味では、ネットには敵いませんが、新聞には新聞にしかできないことが、たくさんあると思うんですよね。
そういう意味でも考えさせられる映画でした。

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