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没後25年 有元利夫展─天空の音楽

2010年03月12日
有元利夫展が私のテリトリーで開催されるなんて、私のためかな?(爆)…などと思う今日この頃です。
毎年2月、小川美術館(東京)では有元利夫展が開かれますが、今年は向こうから来てくれてうれしい限り。
有元が病のため38歳で亡くなってからもう25年、早いものです。
没後25年という節目、規模の大きい展覧会となりました。

有元の作品のほとんどは、小川美術館が所蔵していますが、芸大の卒業制作「私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ」は、芸大の買い上げとなっていて、これまで見る機会がありませんでした。
今回その連作10点のうち5点が展示されていて、私にとって貴重な機会となりました。
この頃の作品は、後の代表作にあるような画風とはちがった魅力があります。
油絵らしい、はっきりた色合い、デッサン力、野心を感じさせる、いかにも才能ある学生らしい作品だなと思います。

今回は本画の他に、銅板画、素描、塑像、私は初めて見る木彫、陶芸作品などもあり、かなりのボリュームでした。

学生時代に訪れたイタリアで、フレスコ画(宗教画)との出会い、そして日本での仏画からの影響、この2つが有元の作風を作っています。
それもできたて(笑)のピカピカではなくて、どちらも風化によるヒビ、傷、欠落がもたらす象徴化…欠落することによって、より意味が強まる…というところに惹かれたようです。
古い寺院により威厳をや格調を感じたりすることに近いのかなとも思います。
あるいは色あせたTシャツに着心地の良さを感じたりすることとか…違うか(笑)。

有元作品の見た目は西洋絵画なので、仏画(古画)の影響はわかりにくいですが、そう聞かされると、金箔の使い方は日本屏風だし、マットな質感は日本画の岩絵の具の質感です。
芸大では日本画科でも学び、妻である有元容子さんは日本画家でしたので、画材の扱いなどを教えてもらっていたようです。
実際はフレスコ画ではなく、油絵のキャンバスに、フレスコ画のように描くということでした。

hanafuruhi
花降る日(1977) 

私にとって有元の魅力は、有元が言うところの風化した色合いと質感です。単純なフォルムであるからこそ、その辺りが引き立つような気がします。
絵画はとかく印刷ではわかりにくいものですが、作品を前にした時にわきあがる穏やかな幸福感は、色合いによるところが大きいと思います。
白みがかったコーラルレッドや色あせた壁画のような質感は、見ていて落ち着きます。
一見意味がなさそうな四角の布のようなもの、壁や階段が描かれていて、これはいつ見ても不思議です。

ほとんどの作品で、描かれているのはたいてい女性一人ですが、特に女性を描きたかったわけではないようです。人物は象徴であり、関係性や意味(行為)、感情を持たせないために、足まで隠れるスカートの女性であり、手は簡略化しているとか。
夜の森にたたずむ女性というモチーフも、暗さや孤独とは無縁のように見えます。
静かなだけれど、寂しさもない、といっても歓喜とも無縁そうな。
あとは見る人によって…ということか。

風化の美を好んだ有元ですが、それは滅びや哀しみではなくて、やすらぎであることが、多くの人に愛される所以でしょうか。
実際有元は、見る人が引き込まれ、人の心を安らげるのが絵画、と考えていたようです。

展覧会の企画として、妻の日本画家、有元容子さんの講演がありました。
告知も地味だったので空いてると思ったら、たくさんの人にびっくり、でも一番驚いたのは、多分学芸員の方かな?
講演と言っても、絵画論のような堅苦しいものではなく、生前の思い出や人柄についてのお話です。
有元は何と芸大を四浪(汗)して入ったとか、いつも友人が大勢いて、周りを巻き込む魅力のある人だったようです。
バロック音楽をこよなく愛し、自身もリコーダーを演奏していました(そうは言っても素人レベルではあったよう・笑)
彼が作曲したバロック風の曲が会場でずっと流れているのは、彼の展覧会ではいつものことです。
音楽にインスピレーションを受けた作品、音楽にちなんだタイトルの作品もたくさんあります。
なかでも、ヴィバルディの「春」をテーマにした作品は、象徴的な構図といい、有元らしい色彩といい、とても素敵です。

没後25年 有元利夫展─天空の音楽
郡山市立美術館

会期:2010年1月30日(土)~3月22日(月・祝)

この展覧会は、7月に東京都庭園美術館に巡回予定です。
展示内容は若干変わるようです。
芸大卒業制作「私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ」は、連作10点ですが、作品保護のため5点ずつにわけ、郡山市立美術館と庭園美術館でそれぞれで展示されます。

没後25年 有元利夫展─天空の音楽
東京都庭園美術館

会期:2010年7月3日(土)~9月5日(日)

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アート・美術館 | Comments(2) | Trackback(1)
Comment
こんばんは。

コメント、TBありがとうございました。

音楽にまつわる作品の展示もありましたね。
リコーダーケースを自分で作ったなんて
いかにも有元らしい逸話です。

予定したよりも大幅に時間オーバーし
絵の前でぼーと立ちすくんで来ました。
>Takさん
こんばんは、こちらこそ古い記事にTB、ありがとうございます。

有元は曲からインスピレーションを得ることも多かっようで、作品と音楽は切り離せないですね。
会場にはたいてい、彼が作曲したバロック風の曲が流れていますし。

私はただのファンなんですが、Takさんが、有元を気に入って下さって、とてもうれしかったです。


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