美の巨人たち~犬塚勉「梅雨の晴れ間」

2017年06月22日
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「梅雨の晴れ間」 72.7×116.7㎝ アクリル・キャンバス 1986年

KIRIN~美の巨人たち~ - テレビ東京
犬塚勉「梅雨の晴れ間」
BSジャパン 2017年6月21放送(テレビ東京2017年5月29日放送)

何気ない自然に心奪われ、一体となろうとした画家・犬塚勉。超緻密な風景画を描く一方、小学校の図画の先生でもありました。1988年、谷川連峰で遭難し、38歳という若さで帰らぬ人に…。
そんな犬塚が1985年の初夏、自宅にこもり描いたのが、今回の作品『梅雨の晴れ間』。縦72.7cm×横1m16cmあまりのアクリル作品です。雑木林の手前に草地が広がり、ヒメジョオンが風に揺れています。驚くべきは描写の密度。無数の草一本一本、葉のひとつひとつを、命を写し取るかの如く描き尽くそうとしています。描かれたのは何の変哲もない場所なのに、なぜか心を捉えて離さない感動が伝わってくるのです。
「ひょっとすると、大変な真実を見つけるかもしれない気がする」――ひたすら描き続けた犬塚は、そうつぶやきました。犬塚が見つけた“真実”とは?謎を解く手がかりは、犬塚が育ち暮らした『多摩ニュータウン』『アルミの折り畳みの椅子』『山の中でよく見かける赤いリボン』。そこにこそ、私たちがこの作品に強く惹かれる理由が…!
彼は一体何を描こうとしたのか?妻・陽子さんの言葉、元教え子や同僚の証言などから、犬塚の思いをひも解きます。


BSジャパン「美の巨人たち」で、久しぶりに犬塚勉の作品を見ました。
最初はNHK日曜美術館でいいなと感じ、その後作品を見る機会がありました。
すっかり魅了されたわけですが、好きというか、自然を捉える彼のまなざしに深く共鳴したという感じです。

「梅雨の晴れ間」に描かれているのは、里山のなにげない草むら、主役らしい雄大な自然や華やかな草花が描かれているわけではありません。
一見、主役が不在なのでは思うくらい、最初に見た時は、これで「評価」されるのだろうかと心配するくらいで(笑)
けれども、この場所がどれだけ美しく輝いているか、犬塚は知っていて、「私も知っている」と確信しています。

手前描かれている白い花はヒメジョオン。似ているハルジオンではなく、春から夏にかけて咲くヒメジョオン。
すっと伸びた茎が描く美しい三角形の空間、摘んでしまうとすぐにしおれてしまう細い花弁の美しさ…これらをちゃんと描いてくれた画家を私は知りません。
大多数は雑草として括られてしまう野原。野草の一本一本を描ききるすごさ、それはこの場所の感動を伝えるため。自然をこう描いて欲しいという理想が実現した気がしました。

犬塚の言葉「ひょっとすると、大変な真実を見つけるかもしれない気がする」には、自然の感動を伝えるすべを見つけたということかなと思っています。
38歳、深く自然に魅入られてしまい、早々にあちらに連れていかれてしまった画家。

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「縦走路」 112.1×162.1㎝ アクリル・キャンバス 1985年

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「暗く深き渓谷の入り口Ⅱ」1988年 未完成 絶筆

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