ジャコメッティ展

2017年07月01日
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ジャコメッティ展
2017年6月14日(水)〜9月4日(月)
国立新美術館

スイスに生まれ、フランスで活躍したアルベルト・ジャコメッティ(1901-1966年)は、20世紀のヨーロッパにおける最も重要な彫刻家のひとりです。アフリカやオセアニアの彫刻やキュビスムへの傾倒、そして、1920年代の終わりから参加したシュルレアリスム運動など、同時代の先鋭的な動きを存分に吸収したジャコメッティは、1935年から、モデルに向き合いつつ独自のスタイルの創出へと歩み出しました。それは、身体を線のように長く引き伸ばした、まったく新たな彫刻でした。ジャコメッティは、見ることと造ることのあいだで葛藤しながら、虚飾を取り去った人間の本質に迫ろうとしたのです。その特異な造形が実存主義や現象学の文脈でも評価されたことは、彼の彫刻が同時代の精神に呼応した証だといえましょう。またジャコメッティは、日本人哲学者である矢内原伊作(1918-1989年)と交流したことでも知られ、矢内原をモデルとした制作は、ジャコメッティに多大な刺激を与えました。
本展覧会は、南フランスにあるマーグ財団美術館のコレクションを中心としたジャコメッティの大回顧展です。この稀代の彫刻家の作品を数多く所蔵するマーグ財団美術館は、パリとチューリヒのジャコメッティ財団と並んで、世界3大ジャコメッティ・コレクションの一角を占めています。本展覧会には、ジャコメッティの貴重な作品を所蔵する国内コレクションのご協力も仰ぎつつ、初期から晩年まで、彫刻、油彩、素描、版画など、選りすぐりの作品、約135点が出品される予定です。


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(左から)《キューブ》1934/35年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス / 《横たわる女》1929年 静岡県立美術館 / 《コンポジション》1927年 マーク・コレクション、パリ / 《女=スプーン》1926/27年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス

初期作品はこんな感じ。アフリカの民族的な香り。スプーンを女性に見立てた作品は、太古のヴィーナスを想像。
そして、シュールレアリスム、キュビズムの影響。
ほんのわずな局面の多角形作品は無駄なく美しい、SF的未知の物体のよう。

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《鼻》1947年 大阪新美術館建設準備室

骸骨に鼻…呪術的です。
日本で言うなら「天狗」か?いや、違いますねえ(笑)

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《犬》1951年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス

ジャコメッティらしくなってきました。デフォルメされた犬、とても風情があります。

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アルベルト・ジャコメッティ《林間の空地、広場、9人の人物》
1950年 ブロンズ
マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、サン=ポール・ド・ヴァンス

ある時期から、「ものに近づけば近づくほどものが遠ざかる」ようになってしまったジャコメッティ。どんなにがんばっても作品は「小像」化してしまう縮小現象なんだとか。
対象との距離感、人のコミュケーションの難しさなんだろうか?戦争の影響もあったようです。
ホントに小さい…楊枝よりは細いけど…と思って見ていくと、なんと楊枝くらいにまで小さくなった作品も!サイコロに楊枝差したのか…みたいな(汗)楊枝を彫刻したと言われても納得しそう。小さい作品に大きな台座のバランスも変わってます。
不思議ですねえ…小さく、デフォルメされているけれど形はとてもリアルで見ていてもあきません。

すれ違う3人の男など、群像作品は独特の世界観があります。どこかにこんな町がありそう。
《林間の空地、広場、9人の人物》も小さい作品、木簡か、「地面からなんか生えて来た」みたいですが、とてもおもしろいです。

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(左から)《歩く男Ⅰ》1960年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス / 《大きな女性立像Ⅱ》1960年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス / 《大きな頭部》1960年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス
(チェース・マンハッタン銀行からの依頼を受けて、ニューヨークの広場のために制作された3点の大作、未完)

こちらはびっくりするほど大きい…やればできる(笑)戦後「大きさ」は復活したらしい。

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このフロアは撮影可。この写真は私が撮ったものですが、ジャコメッティの作品は、長く伸びた巨大な影が立体となって歩き出したようにも見えます。その長い影のそのまた長い影…みたいな(笑)

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「ヴェネツィアの女」シリーズ 1956年 マルグリット&エメ・マーグ財団美術館、 サン=ポール・ド・ヴァンス

細長く引き延ばされた、ジャコメッティらしい作品をみていると、何かを削ぎ落としていった結果とは違うのだろうなと感じます。きっとこうなんだろうなと自然に見えてきます。
ジャコメッティ流のリアルの追求、いずれの作品にも共通するの、高い知性かな。

高く結い上げた髪の妻アネットをモデルにした作品は品格と深い精神性を感じさせます。じっと見つめかえされるような…彫刻家の対象との向き合い方の深さを実感できます。
特徴的な細長い作品はどれも似通っているように見え、モデルなんていらないんじゃないのと思いましたが、ジャコメッティは長時間のモデルが必要だったとか、ゆえに妻や弟、親しい人がモデルの作品が多くなっていった。
リトグラフやデッサンをみると、顔やまなざしに強い執着が感じられ、なるほどと思います。

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留学中だった哲学者、矢内原伊作との交流。
矢内の東洋的な顔立ちにひかれモデルに、矢内は帰国を伸ばしモデルをつとめたという、
高い鼻と落ち窪んだ眼窩が特徴のジャコメッティが、平板な東洋人をモデルに求めたのは不思議な感じがしますが、いかに対象と向き合うか、という意味で矢内に強く惹かれたのだろうと…簡単に言えば「人柄や知性が顔を出る」ってことでしょうか?(笑)

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