「図書館の魔女 」高田大介著

2017年07月08日


鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声を持たないうら若き少女だった。超弩級異世界ファンタジー全四巻、ここに始まる!第45回メフィスト賞受賞作。

分厚い文庫4冊、読み応えです。
しっかり構築された世界観は、指輪物語やゲド戦記、十二国記のような。その分、理解が進まないと読みにくいところもあります。使い慣れない漢字、熟語の多さも、読みにくさかも、特に1巻目は慣れていないので。
ここまで漢字を多用しなくともと思いましたが、文章や文体こそがファンタジーを形作るもの、漢字の海をかき分けるように読み進むうち、唯一無二の世界がここにあるのだと感じられます。
ファンタジー読みでないと取っ付きにくいかもしれませんが、いったんその世界に入ってしまえば、この世界で繰り広げられる壮大なストーリーにはまります。
ただ「双子座」にミトウナ、「自動人形」にアウトマタなど、漢字を外国語読みさせることには抵抗もあります。

知と歴史の集積、図書館はいわば生きたデータベースであり、それらを読み解くために高度な知力を要求すします。その知力を持った者にだけ開かれるのがこの世界の図書館。
図書館という閉じた世界のお話かと思えば全く違う。「魔女」が登場しても、それは魔術でも呪術でもなく、むしろ魔術や悪しき因習を、古今東西の知識や理論でぶち破るのがマツリカたちの仕事。そこにスカッとします。
マツリカたちは、知と理論(時に理屈)を駆使し、策を講じながら紛争の解決、そして世界を変えようとする。それが本書の大きなストーリー。伏線だらけですが、基本は勧善懲悪だと思います。

マツリカは、折にふれ言葉とは何かと問いかけます。
言葉とは情報を伝えるための道具としてではなく、言葉の持つ力に目を向けろと言います。その言葉により形作られた文章、本、…その集積である図書館、そこは資料庫ではなく、知のパワーが満ちているところ。
言葉は伝える本、人がいる限り滅びない。
それは作者高田大介の「言葉」への愛、本への愛なのだと思います。高田は言語学者らしいのですが、なるほどと思いました。
そう考えると、長編も難解な言葉の多用も、SNSの短い文章や顔文字で済ます現代社会への、挑戦的な提言なのかもしれません。

キャラクターもおもしろいです。
言葉を発しない「図書館の魔女」は傲慢とも見える少女、老猾な思考と幼さのギャップ萌え(笑)
2人の司書も個性的で、仕えるというより図書館への愛とわかちがたい友情で結ばれています。キリヒトの先生、政治家、衛兵たち。みなそれぞれに訳ありです。図書館は一つのチームなんですよね。

魔女に仕える事になった田舎育ちの少年キリヒト、マツリカとキリヒトの主従関係の変化も大切なストーリーです。2人が秘密の地下道を探索する場面にわくわく。運命に翻弄され大人にならざるをえないキリヒトが切ない。
そして少年少女の恋心は、頼りなくも未来への希望そのもの。

ラストの長いエピローグは、登場人物たちをねぎらうようなあたたかさがあり、救われます。
世界は良くも悪くも常に変化しつづける。人は出会いと別れを繰り返し、少年少女は成長し、その関係も変わっていくのだろう。
この世界にはまだ語られていない続きの物語がある、そんな読後でした。





関連記事
| Comments(0) | Trackback(0)
Comment

管理者のみに表示
« 昼顔 | HOME | 木いちご »