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シリーズ巨匠たちの肖像 「炎の絆・ゴッホ」

2010年05月07日
今年はヴィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)没後120年にあたります。
オランダのゴッホ美術館では15年間にわたり研究してきた手紙解読プロジェクトが完了し、書簡集(英語、フランス語、オランダ語版)が出版されたそうです。
ゴッホについては作品だけでなく、日本でも数多くの出版物や映画なども公開され、その生涯ついて知ることができましたが、今回のプロジェクトにより、ゴッホと弟テオの兄弟愛というには控えめ過ぎる強い絆がわかってきました。

2010年 5月 4日、NHK-BSで放送されたドキュメンタリー「シリーズ巨匠たちの肖像」は、これを元にしているようです。
初めて知った事実もありますが、見応えのある番組でした。
再放送もありますので、ぜひ見ていただきたいです。

画家として激しく短く生きたゴッホ、傑作を数多く残したものの生涯貧しく、生前には一枚も売れることなく、生活を支えたのは弟のテオであることは有名、番組ではゴッホの生い立ちから。厳格な牧師の家に生まれ、美術商、伝道師を目指すも挫折、27歳で画家を志します。
初期作品は宗教的な思いに根ざし、貧しい農民とともに生き彼らをモデルに描いています。暗くて、ちょっと気がめいりそうな作品が多いですね。
画家として独り立ちはおろか、家族からも厄介者扱いだったゴッホは、1886年、援助を受けていた弟テオを頼りパリへ、同居を始めます。
この時期に印象派の影響をうけ、ゴッホの絵は一気に明るく華やかになります。
しかし彼が最も影響を受けたのは日本の浮世絵、そのあこがれの日本の風景を求め、やがて南仏アルルへ移り住みます。

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アルルの女(メトロポリタン美術館蔵)

番組では時代を追って作品が取り上げていますが、パリ以降の作品は華やかでとても美しい、ロートレックやゴーギャンらの影響もあるのでしょう、構図もどんどん洗練されていきます。
そしてアルル、青、黄、オレンジ、水色、作品はまぶしい陽光に彩られて、テレビで見てるだけでも見とれます。

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アルルの跳ね橋

アルルでは、やがて有名な事件が…ゴーギャンとの共同生活がわずか2ヶ月で破綻し、心を病んだゴッホは自分の耳を切り落としてしまいます。
この事件があまりに衝撃的というか、インパクトがありすぎたのでしょう、ゴッホとは生涯そういう激しさ、制御不可能な野獣のような人物との印象が私の中にありました。
弟テオは、そんな兄を哀れんで支えていたのでは?利用されたとは言わないまでも尽くし損のような人生だったのではないかと想像していました。
ところが、新たにテオの書簡なども見つかり解読が進み、二人の関係がわかってきました。

ゴッホにとってテオは、生活の面倒をみてくれるありがたい存在ですが、傲慢に当たり前と思っていたわけでなく、申し訳なく思っていたようです。
まず弟から生活費をもらうというプライドを保てない現実がありますが、テオの存在はゴッホの精神的なよりどころでもありました。
そしてテオは、兄弟として兄の体を気遣うと同時に、心底画家としてのゴッホを愛し敬っていました。たびたび諍いはありましたが、その気持ちは生涯変わることなく、ゴッホの最大の理解者でありファンでもありました。
テオはゴッホに尽くしていたのではなく、ゴッホが生き甲斐であり、お互いなくてはなならない存在だったのです。
テオに宛てた手紙には「いい絵を描きたい」「(テオに)君は単なる画商ではない、君も絵の制作に加わったのだ」感謝以上の気持ちが綴られています。
ゴッホの死後、心を病んだテオはゴッホの後を追うように亡くなります。
ゴッホとテオの手紙が、市村正親(ゴッホ)と萩原聖人(テオ)で朗読されるのですが、ジーンときますね。

先にも書いたように、私が子供の頃、ゴッホは狂気や激情にとりつかれ作品を描いたというイメージが強かったのですが、実はとても理性的で、勤勉といっていいほど努力を重ねて作品を描いていたと最近では言われています。
浮世絵の影響を受けたという事柄からも、試行錯誤の技法、残された作品からも…作品からは爆発するような色彩や激しさも感じますが、どれも計算された美しい作品になっています。感情のおもむくままこんな風には描けない…私も今はそんな風に思っています。
これはテオの書簡からも裏付けられています。

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花咲く桃の木

ゴッホが後半生心を病み、それが最終的に自殺の引き金になったことは事実です。
しかしその病と闘い、つかの間の回復という限られた時間に、全身全霊で作品を描いていました。
あまりに純粋で不器用な生き方しかできなかった。かだからこそ「星月夜」のような美とすごみに満ちた傑作を残すことができたのかな、今はそんな風に思います。

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星月夜 (ニューヨーク近代美術館)


NHK BS-hi
プレミアム8 シリーズ巨匠たちの肖像
「炎の絆(きずな)・ゴッホ」
放送 :2010年 5月 4日(火) 午後8:00~午後9:30(90分)
再放送(NHK BS-hi)
5月8日(土)午後1:00~2:30  
5月11日(火)午後0:30~2:00  

ゴッホ美術館(オランダ)
日本語ページ

オランダ政府観光局のブログ

番組で紹介された作品はどれも素晴らしく、久しぶりにゴッホを堪能しました。
現在ゴッホの傑作を、素早く見ることができるのは、損保ジャパン東郷青児美術館の「ひまわり」でしょうか。
また秋には、大規模な「ゴッホ展」が予定されています。

損保ジャパン東郷青児美術館(新宿)

国立新美術館「ゴッホ展」

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ひまわり(損保ジャパン東郷青児美術館)
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