2017年08月21日

スージー・ヴェルノン、ロワイヤン、1926年9月
ジャック=アンリ・ラルティーグ展 幸せの瞬間をつかまえて
2017年7月22日(土)~9月10日(日)
福島県立美術館
フランスの裕福な家庭に生まれたジャック=アンリ・ラルティーグ (1894-1986) が父親からカメラを与えられたのは、7歳の時でした。幸せな瞬間がすぐに目の前から消え去ってしまうのを幼いころから恐れていたラルティーグは、そうした瞬間を残していけるカメラという新しい“魔法の機械”に夢中になり、生活のあらゆることを写真におさめました。なかでも、スポーツやジャンプ、自動車、飛行機といった様々な動きをとらえることへのひときわ高い関心や、心霊写真のような写真ならではの表現へのあくなき探求心は、ユニークで鋭い視点の作品を生み出しました。また、家族や友人、恋人の幸せに満ちたすがたを愛情深くとらえた作品も多く残しています。
この展覧会では、子ども時代から晩年までの代表的な作品と、その多くが日本初公開であるカラー作品など約160点を通して、写真を楽しみ、過ぎ行く時間や人生の歓びをつかまえようとしたラルティーグの世界を紹介します。

ぼくの空中プロペラ式水上滑走艇、板の上に取り付けた「ゴーモン・ブロックノート」カメラを使ってお風呂の中で撮った写真
買ってもらったカメラに夢中の「僕」、セッティングに凝って、ママにシャッターを切ってもらう。僕とママの会話が聞こえてきそう。

《幽霊になったジスー、ヴィラ・マロニエにて、シャテル=ギヨン》1905年7月
いわゆるおふざけ写真、はやっていたらしい。

従妹のビショナード、コルタンベール通り 40番地 パリ 1905年

ルザ 1907
裕福な家庭に生まれたラルティーグ、新し物好きの両親は何でも子どもに買い与えた。
7歳でカメラ、そして自転車、大人になるにつれ、自動車、…なんと自作の飛行機まで作ろうとする。
写真はどれも楽しく、幸福感に満ちています。
不思議なのは、ラルティーグは写真に幸せな瞬間をとどめたいと思ったこと。小さな少年は、今の自分が「幸福」であり、それを「止めたい」と考えるだろうか。裕福な家に生まれたら、幸せは当たり前で、ずっと続くものと、子どもなら考えそうなんですが。
決定的瞬間やドラマチックな場面を撮りたいのはわかるけれど。今の一瞬の幸せにそこまでこだわるのが、ちょっと不思議です。

ボブに乗るジスーとマドレーヌ・ティボー、それを見守るフォルテット夫人とタターヌとママ、ボブのレース ルザ 1911
当時相当高価であったろう写真を、遊びに惜しげなく使う。
いかにも記念写真、記録写真ではなくて、遊びんだりふざけた写真が多い。ジャンプする子ども、でんぐり返し、傘もって飛び降りる子ども、自転車で転倒する写真もある。水遊び、雪遊び…なにげないしあわせな風景。
スピード感あふれる自動車の写真もあるけれど、周囲ではしゃいでいる人たちも映っている。プライベート感満載です。

スケート遊び、ラルティークの写真は、当時の風俗を知る貴重な資料にもなっているらしい。
細かい事まで記録した日記もありました。とにかくどんなことも記録して残したいんですね。それはもう性分かな(笑)

《レーシングカー「ドラージュ」、A.C.F.グランプリ、ル・トレポー》1912年6月26日

ライト兄弟をまねて、趣味で飛行機作って遊ぶ(驚)
第一次世界大戦、第二次世界大戦もおきますが、ラルティーグは戦争や政治、イデオロギーに関わる事なく暮らした…暮らせた?
楽しい事、美しい事だけを見つめ、記録したラルティーグ、こまでくるとあっぱれか?(笑)

Dani, Aix-les-Bains, août 1925

ダニとミションとボビー、フリボール・クラブにて、カンヌ、1936年5月.
ラルティーグの子どもたちも楽しそうな写真ばかり。
女性は皆美しく、流行のモードに身をつつんでいます。

ビビ、「エデン・ロック」のレストランにて、アンティーブ岬、1920年5月

《フロレット、ヴァンス》1954年
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