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「フィギュアスケートとジェンダー-ぼくらに寄り添うスポーツの力 」後藤 太輔著

2018年05月26日


フィギュアスケート界では男女選手の交流・協力活動が多く、引退後も、コーチ、プロスケーター、振付師、衣装デザイナーなど多ジャンルで活躍している。インストラクター協会理事にも女性が多く、他のスポーツと比べ、ジェンダーバイアスが少ない競技といえる。海外では、現役選手による同性愛カミングアウト、アラブの選手によるヒジャブ着用など、社会に対して積極的にアピールする選手も多い。本書は、フィギュアスケートとジェンダーを切り口に、スポーツと社会の繫がり、2020年東京五輪パラリンピックへの向き合い方を伝える。 現役記者ならではの豊富な取材に基づく逸話が満載!

フィギュアスケートをメインに、フィギュアスケートを取り巻く環境、日本と世界の違い、そしてスポーツやアスリートの、社会の関わり方について幅広く書かれています。
フィギュアスケートだけ、特定のスケーターだけにフォーカスした本とは全く違い、他のスポーツにも多くのページが割かれていますが、フィギュアスケートを客観的に捉えるという意味でもおもしろかったです。
記者としてたくさんの競技を見てきたからこその視点だなと思います。
たくさんの項目があるため、コンテンツの掘り下げが浅い面もありますが、興味を持てば、今の時代ネットなどで情報やその後の状況を知ることができます。それよりも、スポーツやアスリートの社会への影響力、果たすべき役割がこんなにあるのだなと知っただけでも有意義。読み応えがありました。

そうはいってもフィギュアスケート。新聞記事など一般的な報道では知ることのない裏話などもあり楽しめます。
フィギュアスケートの歴史、アダムやジェフ、ジョニーなど、性的マイノリティの選手がわりと多いこと。
美姫ちゃんを例に、日本はシングルマザーに敬意がないこと。
「日本は一つの道を極めることが美徳という考え方がある」
結果として恋愛や結婚、セカンドキャリアを考えることに批判的になってしまう。たしかに日本はアスリートにこうあるべきという型で見てしまうことが多いですよね。

なにかとギクシャクして日韓や日中関係もフィギュアスケートではオープンで、昔から友好的な関係だったらしい。
中国ペアの父ヤオピンコーチに、フィギュアスケートの基礎を教えたのは杉田秀男先生。
小学生の羽生結弦選手を指導していた都築章一郎コーチ、佐藤信夫コーチも中国で指導者育成をしていたらしい。
その都築コーチの指導を受けたのが、佐野稔コーチ、五十嵐文男さん、長久保裕コーチ。中野園子コーチは佐藤信夫コーチの教え子。
キム・ヨナ選手の韓国でのコーチ、シン・ヘスクコーチは選手時代、日本にスケート留学、樋口豊コーチから基礎を学んでいた。
都築コーチの指導のルーツは旧ソ連、つまり日本の指導のルーツはソ連なんですね…まあ、ちょっと考えてみれば納得ですが。
初めて知ることも多かったです。

戦争や民族紛争とスポーツの関わりでは、紛争地ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のサッカー監督オシム。
教育とスポーツでは、浅田真央選手や髙橋大輔、弱さや失敗を隠さない選手から学ぶこと。
ケガにより体について勉強に励み、理論的に自分をとらえ、練習を工夫することで五輪連覇を成し遂げた羽生結弦選手

貧困や虐待、難病においてもスポーツは大きな力がある。
ドッジボール、サッカー、野球、バスケ…スポーツのトップチーム、トップアスリートは社会的影響力が大きい、より社会貢献活動に取り組むべき。そこが一番進んでいるのはアメリカになるのかな。意識が違うような気がします。
日本ではボクシング坂本博之選手、Jリーグ選手の取組み。そして羽生結弦選手と東日本大震災。
スポーツの力でどこまで社会を変えることができるか?パラリンピックの意義と課題など。

摂食障害、ドーピング、暴力問題、スポーツが抱える問題についても。
ユリアやグレイシーが追い込まれた末の摂食障害。
ケガをきっかけに栄養面を見直し、体重は増えてもパフォーマンスは向上した宮原知子選手のことなど(身長2cm伸びた!)

クリーンなイメージを求められているわりにそうではないのもスポーツ。
最近の大相撲、FIFA、アメフトの問題をみてもその根深さに気が滅入ることもありますよね。仲間内で占められるために自浄作用が働かないと…わかっていることなんですけどねえ。

社会問題など、本書はとにかくたくさんのことに触れています。
勝ち負けだけでなく、負けや失敗、ケガをした姿も伝え、読んだ人に共感してもらいたい。特にこれからの社会を担う子ども達へ、厳しい環境に置かれた子ども達の力になりたい。それが後藤さんの思いです。
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