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「夜想曲集」カズオ・イシグロ著

2018年06月06日


ベネチアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅を描いた「老歌手」。芽の出ない天才中年サックス奏者が、図らずも一流ホテルの秘密階でセレブリティと共に過ごした数夜の顛末をユーモラスに回想する「夜想曲」を含む、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の黄昏を、愛の終わりを、若き日の野心を、才能の神秘を、叶えられなかった夢を描く、著者初の短篇集。

緻密に構築されているカズオ・イシグロの長編と比べると、とても読みやすい短編集。
登場人物はいずれも才能や能力が(そこそこ)あるにもかかわらず、人生をちょっと損ししてる、運悪くどこかでふみ間違ってしまったかもなあ…そんな人々。
野心をもって計算高くのし上がるほど悪人にもなれず、かといって善人にもなりきれない。まあつまり、そういう人いますよね、私たちのまわりに(笑)
そんな彼らにおとずれる、もしかして人生最大、最後のチャンス?ところが、なんか怪しい話、まじめなのになんかおかしい行動。クスクス笑ってしまうようなエピソード。
結末はあるようなないような…それも庶民の人生かなと思う。

ちょっとお間抜けな顛末も、品よくまとまっています。
ベネチアの運河の静けさや湿度、セレブな女達がまとっているだろう香水、町に流れる音楽や喧噪、夜景。高原の朝の空気感まで感じさせる美しい文章はさすがだと思います。

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