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「自生の夢」飛 浩隆 著

2018年06月22日


73人を言葉の力で死に追いやった稀代の殺人者が、怪物〈忌字禍(イマジカ)〉を滅ぼすために、いま召還される───
第41回星雲賞日本短編部門受賞作「自生の夢」他、今世紀に発表された読切短編のすべてを収録。
最先端の想像力、五感に触れる官能性。現代SFの最高峰、10年ぶり待望の作品集。
「この作者は怪物だ。私が神だったら、彼の本をすべて消滅させるだろう。世界の秘密を守るために。」───穂村弘
その他の収録作品:

◎「海の指」第46回星雲賞日本短編部門受賞
霧が晴れたとき、海岸に面した町が〈灰洋(うみ)〉となり、異形の事物は奏でられていく。
◎「星窓 remixed version」日本SF大賞受賞第1作
宇宙空間からぽんと切り抜いたガラス板を買ってきた。
◎「#銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻」
天才詩人アリス・ウォンの生み出したもの、遺したもの。
◎「はるかな響き」 人類誕生以前に行われた犯罪、その結果、人類を殲滅させるに至った犯罪。


グランヴァカンスで、すっかり惚れこんだ飛 浩隆さんの短編集です。
短編でもその世界は濃密、ゆっくり丁寧に読みました。

「海の指」は、以前ネット配信で読み、その世界に飲み込まれそうな気持ちになりました。まだ地球があったとして、「世界」が存在するとしたら、ここは辺境の離島だろうか?ちゃぶ台にブラウン管のテレビ…昭和の風情の町で、平凡につつましく暮らす志津子。ところがこの町は人知が及ばない「灰洋(うみ)」に囲まれていて、異形の「海の指」によって人も町も書き換えられていく。
人々はたくましく、灰洋(うみ)を利用し、生活の糧にしているものの、灰洋と「海の指」は予知できない、決してコントロールはできない存在。灰洋は人や物だけでなく、記憶、喜びや悲しみ、嫉妬や恨み、感情さえも飲み込み、やがて「海の指」となって、再び町を飲み込み、町や人を改変していく。
圧倒的な世界観、湿った空気感、海辺の町の匂い、志津子のエロス。受け入れ、耐えることでしか強くなれない。日本という土壌でしか誕生しえないSFのような気がしました。

「星窓」はこれぞ短編、きらきらときらめく一夏を捉えたような作品。
「#銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻」「自生の夢」は連作、長編のような読み応えです。人はどこまでが人なのだろう。人の意志や感覚とはなんだろう。性格や記憶も操られていく世界がすぐそこにきているような。「羊たちの沈黙」のような怖さもあります。
「はるかな響き」も含め、感覚や言葉の世界に踏み込んでくる短編集でした。
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「第38回日本SF大賞・受賞のことば」、「選考経過 選評」、「スタッフ」が公開されました!
2018年6月22日

第38回日本SF大賞
小川哲『ゲームの王国』(早川書房)
飛浩隆『自生の夢』(河出書房新社)

飛は2度目のSF大賞受賞、異例もことらしい。でも充分その意義があると思います。

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