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セミたちと温暖化

2010年06月19日

セミたちと温暖化 (新潮文庫)セミたちと温暖化 (新潮文庫)
(2009/12/24)
日高 敏隆

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タイトルは一見取っつきにくそうですが、とても楽しいエッセイ。
それは私が、日高氏のファンであるから…とは思いますが。

日高利隆氏(1930~2009)は、動物行動学の日本での先駆けであり、日本動物行動学会の初代会長、京都大学教授、滋賀県立大学学長などを経て、最後の大きなポストは、地球研(総合地球環境学研究所)初代所長。
後半生は専門分野を越え、生き物全体、地球環境全般の視野に立った提言も多かったです。
立派な経歴をお持ちのエライ学者なのですが、エッセイは本当に素敵です。

本書は最晩年のエッセイ集ということになるのでしょうか。
研究者の立場で、蝶や昆虫のあれこれを書いているものが多いですが、日常が中心、身近な虫からペット、日常生活、教育、社会、そして環境まで多岐にわたっています。

表題のエッセイは、自宅のある京都洛北は町中より気温が低いため大好きなセミが少ない。ところがセミの分布を決めるのは地温、微妙な変化にも虫たちは敏感である。しかし相対的にセミの数は減っているらしい。
これまでも地球環境(天候)が一定であったことはない、どかでは冷夏ががあり暖冬がある。一口に温暖化の影響とっても、生き物の行動を左右するのは、気温だけでなく、地温や日照時間、湿度様々である。

子どもの頃から生き物が好きで、その好奇心は生涯変わることなかった日高氏、どんなときも、生き物にも社会にも優しいまなざし、読むとほっとします。なにより楽しく読みやすい。
正論を振りかざし、過激で傲慢にすら見える近頃の「環境保護運動」に若干引き気味、ちょっと疲れた私には特に(苦笑)

そういえば、只今開催中のW杯、ふだんサッカーを見ない私もそれなりに見ています。
世間話もサッカー、ある知り合いが言うには、サッカーは肉食の狩猟民族のスポーツ、農耕民族の日本人はどうしたって不利…みたいなことを。…正しいかどうかはともかく、そんな会話は、結構ありますよね。
エッセイにはこんな箇所がありました(要点だけですが)

日高氏は30代で、ちょうど東京オリンピックが開催された年にフランス留学していました。
招いてくれた先生宅に下宿し生活を共にすることに。
ある時買い物にで出かける先生の夫人と20歳のお嬢さんにつき合ってみると、今夜はウサギ料理にするからと肉屋へ。そこには毛皮のままの野うさぎが並べてあり、夫人とお嬢さんは、どれがかわいいか(もちろん死んでいる)を一匹づつ手に取って論じている。お嬢さんがようやく決め、両手に抱えながら「かわいい、かわいい…」を連発しながら帰宅。
夕方、夫人が料理、首をポンと切り落とし毛皮をはぎ、まるごとオーブンへ、お嬢さんは、さっきまでかわいかったウサギを、今度は「おいしい!」といいながらほおばっている。
…驚きだった。
日本人の肉食とは本質からして違う。ヨーロッパの思想の根源は肉食にあるのではないか。

ヨーロッパの市場を歩くと、肉が生前のお姿に近い状態(汗)で売っていることが多くて、(私は観光客だから)慣れないとびっくりしますよね。食も文化、ずいぶんと違うものだなあと思いました。
自然も文化も、一朝一夕に理解できるものではありませんね。
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