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100分 de 名著 「ペスト」一挙アンコール放送

2020年04月22日
Eテレの100分 de 名著はおもしろくて時々見ていますが、「ペスト」(2018年6月初回放送)は見ていませんでした。
今回、世界で新型コロナウイルスが猛威をふるう中、一挙再放送されました。
なんとなく気が重くて録画したままでしたが見始めると、今現在の国内外の状況に酷似していて鳥肌が立つようでした。

100分 de 名著 名著77 カミュ「ペスト」
第二次大戦の只中、「異邦人」「シーシュポスの神話」等の作品で「不条理」の哲学を打ち出し戦後の思想界に巨大な影響を与え続けた作家アルベール・カミュ (1913- 1960)。彼が自らのレジスタンス活動で培った思想を通して、戦争や全体主義、大災害といった極限状況に、人間はどう向き合い、どう生きていくべきかを問うた代表作が「ペスト」である。
舞台は、突如ペストの猛威にさらされた北アフリカの港湾都市オラン市。猖獗を極めるペストの蔓延で、次々と罪なき人々が命を失っていく。その一方でオラン市は感染拡大阻止のため外界から完全に遮断。医師リウーは、友人のタルーらとともにこの極限状況に立ち向かっていくが、あらゆる試みは挫折しペストの災禍は拡大の一途をたどる。


100分 de 名著
NHK(Eテレ) 毎週月曜日/午後10時25分~10時50分
<再>水曜日/午前5時30分~5時55分、午後0時~0時25分

舞台は商売や金儲けに熱心なアルジェリアの港町オラン。
じわじわ忍び寄るペストの影、市民の半数が死ぬかもしれない疫病に医師リウーは危機感を覚えますが、ペストの流行を認めたくない町の人々はごく普通に経済を謳歌しながら暮らしている。なんとなく自分は感染しないような気がしていく。

このあたり、1〜2月頃の日本の状況とよく似ています。
コロナは恐いけれども、日本は大丈夫なような気がしている、しばらくすれば収まってオリンピックも開催されるはずと思っていた、まだいくらか平和な時期と。

やがてオランはペストの爆発的な流行により封鎖されてしまいます。後手に回る行政、神にすがる人々…物理的にも精神的にも閉じ込められ、登場人物たちは否応なく生き方も問われていく。
猛威をふるうペストに、医師リウーは友人のタルーたちと立ち向かっていく。

ペストを一掃してくれるヒーローはどこにもいません。
医師リウーは「ヒロイズムではない、ペストと戦う唯一の方法は誠実さです。」と語ります。
つまりは自分の職務を果たすこと。自分の仕事に誠実に、やるべきことをやる。リウーにとりそれは最大限の注意を払い医療の現場に立つことでもある。立場が違えば家にいることかもしれないし、政治家として国民を守るために何をすべきかということでもあります。
理念や夢のような理想に殉ずることなく、ささやかでも、自分にできることをコツコツやっていくこと。

恐いのはここからですね。
ペストから4ヶ月、死者は急増し、街では略奪も起きてしまう。
出口の見えない絶望、ところが市民はその絶望にすら慣れていってしまう。まるでないことのように享楽に耽る人々もいる。
リウーは「絶望になれることは、絶望そのものより悪いのだ。記憶もなく、希望もなく、ただ現在の中にはまり込んでいる。絶望から脱しようともしない」

個人では何ともならない、逃れようがない、受け入れざるをえない災いを前に人はどう生きるのでしょうか?
罪のない子どもも亡くなってしまう。そこに神もなにもない。神に仕える者でさえ揺れ動く心。
そしてまた基本に戻るというか、リウーたちにとりそこに立ち向かう希望は、決して大げさなものではなく、ささやかな仕事への愛であったり、仲間との連帯(絆)だったりする。

1年が近くたち、ペストはやっと沈静化していきます。
ところがリウーは、生き方も信条も違うこともこえて結ばれた仲間や家族を失ってしまいます。
死力をつくしペストと向き合ったリウーに訪れる不条理。いったいどうむきあえばいいのか。

それでもリウーは言います。
「ペストと人間の勝負で人間がかち得たものは認識と記憶だった」
人生を受け入れ、どこまでも人間への賞賛と感謝を忘れないリウーでした。

「ペスト」はナチス侵略の比喩としての作品だったそうです。
パンデミックを「戦争」に例える国のトップもいますが、そういうことかなと思います。
私自身は戦争という例えにピンとは来ないのですが…。どちらかいうと、共存していく他ないような気がします。
ペストをコントロールできる日が来たとしても、次の時代には新型コロナウイルスが現れ、あるいは大きな自然災害が起きる。人類の歴史はその繰り返しです。

災害や戦争を1か0か、善か悪かをきっぱり線引きすることは難しい。
「歴史は個人の死を問題にしない」…悲しいですね。どんな形でか幸福かどうかもわからないですが、亡くなる方ひとりひとりに家族や人生があるけれど、戦争やパンデミックになると、死は歴史やデータとなってしまう。
実際、新型コロナウイルスには、データで立ち向かうことが大切なんですが、一人一人の人生を忘れてはいけませんね。

番組で紹介されるのは作品のごく一部に過ぎないのですが…我々はどう生きるのか…ということを突きつけられている気がします。
番組ではMC伊集院さんの鋭い洞察も光っていました。

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