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ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展

2008年11月20日
「静物画」と言っても、私の目当てはもちろん、特別出品ベラスケス「薔薇色の衣装のマルガリータ王女」です。
ベラスケスはとても好きです。最も好きな作品は、あまりにベタ過ぎますがプラド美術館の「ラス・メニーナス」。
ベラスケスは1600年代のスペイン王室でフェリペ4世に気に入られた宮廷画家。宮廷画家は画家としては花形ですが、王族や貴族とは身分の違う、いわばだたの職人ですから地位は低く、画家に求められるのは、これぞという威厳や威圧感にあふれた象徴としての肖像画や、政略結婚用見合い写真としての腕。ところがベラスケスの肖像画は、どの作品もそこから一歩踏み込んでいるよう、どの作品もそこから一歩踏み込んでいるようなおもしろさがあります。

王女マルガリータを描いた一連の作品は、身分の違う相手に対する最大限の愛情が感じられます。家族や恋人のようなストレートな愛情ではなく、敬意という微妙な距離感のある、見守るような愛情とでも言えばいいのか。
「薔薇色の衣装のマルガリータ王女」は、王女を描いた作品の中で、最も早い時期に描かれたもので、3才。
豪華な衣装を身につけているけれど、まだ自分が何者かわかっていない、あどけない…とういうかあいまいな顔はまさに3才ですね。
一見超写実、緻密、たんねんに描かれているようで、近くから見ると大胆な筆遣いが、ベラスケスの特徴です。それが人物を生き生きとした存在にし、肖像画という鋳型に閉じこめていない理由のひとつかもしれません。
彼ほどの力量があれば、王女を天使のようにも、威厳に満ちた絶対的な存在にも描けると思いますが、そうではなく生身の人間らしさを描きつつ、ギリギリのとこで王族としての品位を保っているような気がします。
王女以外の肖像画でもそのような感じで、お客様・雇い主以上友人未満、…友人という親しさはは少し違いますね。スペイン王室の傍観者、狂言回しみたいな役割かもしれません。
ただベラスケスの描くマルガリータ王女は、より深い愛情が感じられます。

マルガリータ王女は14才で、ウィーンのハプスブルグ家に嫁ぎ、(当時は至上命令として)子どもに恵まれないまま22才で亡くなります。そういうはかなさが、3才の肖像画にも感じられるような気が…というのは、あまりに感傷的すぎますか。
ラヴェルの名曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、ルーブル美術館所蔵にある、ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得たと言われています(しかし、今ひとつ定かではないようですが)


展示の大部分を占める静物画もおもしろかったです。
16~18世紀頃の貴族や裕福な商人が、インテリア代わりの意味もあるのでしょう。四季の花々、狩りの獲物、豪華な調度品などを描かせた、一つのジャンルです。
狩りの獲物を描くのは、自慢なんでしょうか?どうだ!という意味で。今見ると、いかにも死んだ動物っぽくて、ちょっと引いてしまいますね。

植物や花を描いた作品も多数、それぞれの花に宗教的な意味や隠れた意図があるようですが、一つ一つ探る時間はさすがに無く…。
植物はその時代の植物がかなり詳細に描かれており、現在の園芸植物に対して原種に近いものもあるようです。詳しい人なら読み解くのもおもしろそう。
現代のヒヤシンスは花が球状に近く花をつけますが、昔は花がパラパラだったり。
チューリップとバラが大人気、図録によると、チューリップは17世紀最も高価な花だったとか。高価ではかないのが花、お金持ちの特権ですね。

得意げに置かれた狩りの獲物、食卓の肉や果物の豪華さ、美しい花、そのどれも何百年も前に誰かの口に入ったり、花はとっくに朽ちて、今はもう無い。
絵が豪華であればあるほど、はかなさがあるというものですね。

宮城県美術館

ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展

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