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川は静かに流れ

2010年12月08日

川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)川は静かに流れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2009/02/06)
ジョン・ハート

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2008年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞

アメリカの地方都市、殺人の容疑者となり、結局は無罪となったものの故郷を追われた青年アダム。
かつての友人の窮地を助けるため、5年ぶりに故郷に帰ると、そこには父、アダムの罪を証言した継母、義理の兄弟、そして元恋人、家族同然のつきあいをした人がいる。
そして閉鎖的な田舎町は、5年前の容疑者であるアダムを受け入れようとしない。

謎解きはシンプルだし、背景にある土地売却問題も説得力が弱いと思いました。
しかし、冒頭の謝辞やあとがきにるように、これはミステリーというより家族小説なんですね。
恋、嫉妬、裏切り、徐々にあきらかになっていく不可解な行動の意味は…。
母親の死、父と子の関係、義母との確執、この小説は血(血縁)をめぐる、せつなく悲しい愛憎ドラマ。

探偵作家クラブ賞を受賞ということで、初めて手に取った作家です。
アメリカの現代ミステリーは結構読む方ですが、どちらかというとドライな空気感に魅力を感じているので、どろどろした内容に、読み始めてから引いてしまう部分もありました。
似てないけど、ロバート・ゴダートのような雰囲気が好きな方にはおすすめかもしれません。

心理描写は丹念だけれどもわりと平凡、それでも、すっと読み進めてしまうのは、映像が浮かぶような描写が素晴らしいからでした。
幸せな出来事も不幸な出来事も、いつもそばに川がある。
謎解きや展開が多少ちぐはぐでも、季節や時間も感じさせる川や背景の描写によって、美しくまとまとまり、小説としての格が上がっているような気がします。

それにしても、この人間関係のどろどろ感は、日本の2時間ドラマ?というくらいで、いろいろ考えていたら「犬神家の一族」を思い出しました。
小説は読んでいないので、市川崑監督の映画の方(最近のリメイク版は見ていません)。
閉鎖的な集落で起こる事件、人間関係の複雑さ、物語のカギは血をめぐるものでした。
映画は市川作品らしく、とても映像が美しかったですね。
まあショッキングなシーンはともかくです(汗)
市川監督は光と影をとても大切にする監督で、映像美という意味で素晴らしい作品が多いと思います。
手法は違うけれど、本書の風景描写の緻密さに通じるものがあるような気がしました。


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石坂浩二、高峰三枝子 他

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