FC2ブログ

篠宮 龍三「ブルー・ゾーン」

2011年01月08日

ブルー・ゾーンブルー・ゾーン
(2010/08)
篠宮 龍三

商品詳細を見る

映画「グランブルー」をきっかけに、ジャック・マイヨールにあこがれフリーダイビングを始め、日本人初のプロフリーダイバーになった篠宮龍三氏。
スポーツとしてのフリーダイビングと、その魅力を語った本です。

人魚のような大きなフィンを着けてダイビングする映像はおもしろいなあと、テレビなどで何度か見たことがありますが、マリンスポーツ、そして競技のフリーダイビングについて、私はほとんど知りません。
ですがこの本、おもしろかったです。
何も知らなかったのでよけい新鮮だったのかもしれません。
競技としての魅力は、私では知識がなさ過ぎるので、具体的な見所などには触れませんが、奥が深いスポーツなんですね。

まず、とても美しいスポーツだということ。
「深く潜るにつれ、ライトブルーの世界から、青は深さを増し闇に近づいていく、完全な闇の手前に青い闇、グランブルーの世界が広がっている。」
神秘的でこの世のものとは思えないほど美しい世界、しかしその先には、人間の肉体的限界を超える死の闇が広がっている。
深海は宇宙を連想させるとか。
フリーダイビングとは記録を伸ばすことに挑戦することですが、人類の未知の旅…スポーツではあるけれど、まるで宇宙飛行士か限界に挑戦し続ける登山家のようですよね。

「フリーダイビングは死と隣り合わせで海に潜り、極限に達すると陸という生に向かって還ってくる。輪廻転生なのだ」
「死に直面した世界から還ってきて呼吸に再会すると、生と死がぐるりと円環を描いて、再び一つになる。海の底と人間界。それは陰と陽でもあり、コインの表と裏のようでもある」
篠宮氏だからこそかもしれませんが、このような深い精神世界を持つスポーツだとは、全く知りませんでした。

どんなスポーツも技術(や体力)を高めることと、精神(メンタル)を鍛える部分があり、トップであればあるほど、精神的な部分のウェイトが大きくなってくるもの。特定のスポーツを応援したことがある方ならわかるのではと思います。
フリーダイビングは、その中でも精神世界のウェイトが非常に大きいということに、まず驚きました。
「深く潜るには海と調和する必要がある」
「海は自分の心を映し出す鏡のような存在、ごまかしも嘘も通用しない。」
「他のスポーツと大きく違うことは、闘争心はあだになるということ」
技術、体力(年齢)だけではなく、大切なのは生きて還ってくるための「直感」や自分の体をコントロールできること。
彼があこがれるジャック・マイヨールは、禅に傾倒してとか。
「因果一如」
スランプに陥った篠宮氏は、ジャックに導かれるように禅の思想に触れ、スランプから脱したそうです。
「結果に対する執着を無くした途端良い結果がついてくる」
「出来事の善悪は自分が主観で判断しているだけで、現象としては全てニュートラルなのだ…すべては過程、結果でさえ、次への過程にすぎない」

篠宮氏は、勝つためだけでなく、人の心に残るパフォーマンスをしたいと書いています。
記録を更新するスポーツでありながら、こう言い切れる氏に、このスポーツの特異な面がわかるような気がします。
それは、ヨガや禅に傾倒していたジャック・マイヨールの生き方でもあったようです。

そしてこのスポーツを広めたい、海を大切にしたいというメッセンジャーになりたい。
日本人に生まれ育ちながら、西洋人のジャックを通して、東洋の思想や日本の文化を再発見した篠宮氏。

スポーツの本でありながらユニークだと感じたのは、氏が日本語の感性の豊かさ、美しさは、海で感じたことを描くために、最もふさわしい言語だと言及している点です。
話題にもなった本書は、書店で平積みになっており、私はぱらぱら見てから購入したのですが、編集の手は入っているにしても、文章や言葉がとてもきれいで、それが購入の決め手でした。
もちろん彼はプロのライターではありませんので、限界はあると思います。
写真ページもあり、テキストの量は多くはありませんが、雰囲気でなんとかしようとしているのではなく、できうる限り的確でシンプル、美しい言葉を意識していることが伝わってきます。

「美しい日本語で、僕が海から学んだことを伝えていきたい。」
アスリートがスポーツを語る本の結びの文章が、こうであることにやはり驚きます。

「世界一深く潜るのと同時に、世界一美しく潜る。ひとりの表現者としてこの二つを両立させたい」
これが篠宮氏の人生における美学なのでしょう。


グラン・ブルー 完全版 -デジタル・レストア・バージョン- Blu-rayグラン・ブルー 完全版 -デジタル・レストア・バージョン- Blu-ray
(2010/09/24)
ロザンナ・アークェット、ジャン=マルク・バール 他

商品詳細を見る


関連記事
| Comments(0) | Trackback(0)
Comment

管理者のみに表示